虐待や経済上の理由で実の親と一緒に暮らすことができない子どもを育てることを、社会的養護と言います。いままでそのほとんどを児童養護施設が担ってきていました。ですが、職員の多くに異動があるうえ、子ども一人に対する職員の数が少ないために支援が十分に行き届かないこともあります。そこで、より家庭に近い環境で育てることのできる里親制度が注目されています。
7月31日、厚生労働省はより具体的な目標を公表しました。就学前の子どもの75%以上、就学後の50%以上を里親に担ってもらうというものです。昨年5月には、児童福祉法が改正されています。初めて国が里親などの家庭的養護を推進していく方向性を示しました。数値化したことで、政府の取り組む意思が感じられます。
ですが、実際は簡単に達成することは難しいと思います。私の家庭では、虐待や経済上の理由で実の親と一緒に暮らすことができない子どもの里親をしていました。私が5歳のときから中学2年生になるまで活動をしていました。
私が小学4年生の夏休みの期間に、経済的事情から施設で暮らすことになった中学2年生の男の子を受け入れました。突然、自分にお兄ちゃんができたわけです。遊んでほしかったのですが、初日に「お前は恵まれているんだ。かまわないでくれ」と言われました。自分の部屋から出ようとしません。母には心を開いて話しているようでした。でも、今振り返れば彼は気を使い、無理していたのかもしれません。結局、私と仲良くなれずに彼は施設に戻っていきました。
子どもと里親の相性もあります。必ずしもうまくいくとは限らないのです。実際に、厚労省によると、里親になじめないなどの理由で、里親やファミリーホームの元を離れ、施設などに移った子どもは2015年度だけで405人いたそうです。
もっと里親をする人、預かる子どもへの支援が必要です。困った時に社会福祉士や臨床心理士といつでも相談できると心強いです。受け入れ家庭にばかり目がいきがちですが、里親のもとで暮らすことになる子どもたちにとって、相談相手がいることも重要です。里親と合わない、生きづらいと思った時に、子どもたちの意思を尊重することにもつながります。
さまざまな家庭があっていいのです。里親だってその一つ。そう思える日が来るには時間がかかるかもしれません。でも少しずつ制度が整っていけば嬉しいです。
参考記事:
18日 読売新聞朝刊(東京14版)3面(総合)「里親・養子制度 受け入れ家庭への支援拡充を」