アメリカのトランプ大統領は1日、地球温暖化対策の国際的枠組みである「パリ協定」から離脱する意向を表明しました。大統領はホワイトハウスでの会見で「米国と米国民を守る重大な義務を果たすため、協定から離脱する」と勝ち誇った様子で述べました。
大統領選中、たびたび協定を批判し離脱を主張してきたトランプ氏です。公約通りの結果に見えますが、その裏には政権内部の対立があったと伝えられています。長女のイバンカ大統領補佐官やティラーソン国務長官らはパリ協定の「残留」を主張し、バノン大統領上級顧問・主席戦略官やプルイット環境保護局長官らが「離脱」を標榜するなど政権内の溝は大きくなっていました。
このパリ協定は、世界第1位の温室効果ガス排出国の中国をはじめ、世界の約190か国が参加する画期的な協定です。当然、今回の決定に対して世界中から批判の声が上がっています。ドイツ、フランス、イタリアの3か国は共同で声明を発表し、協定の再交渉の可能性を否定しました。また、中国もアメリカの決定の如何に関わらず協定の履行を明言しました。
日本でも、山本環境大臣が「失望」を表明し、公明党が「理解できない」(井上幹事長)と批判するなど批判の声があがります。そんな中、麻生財務大臣は、第1次世界大戦の反省を機に創設された国際連盟をアメリカ大統領が主導して作ったにも関わらず、アメリカ自身が参加しなかったことを引き合いに出し、「その程度の国だと思っている」と痛烈に批判しました。同盟国の政策決定に、ここまで踏み込んで批判するのは異例のことでしょう。
しかし、残念ながらアメリカは「その程度の国」に成り下がってしまう危険性をはらんでいます。選挙期間中の過激な発言を控え、現実路線へ転換しつつあると期待する声があるなか、国際社会が一丸となって地球温暖化を防ぐ取り組みの重要性をトランプ氏は理解していないのでしょう。NATO首脳会合でのほかの首脳を押しのける姿は国内外から失笑をかっていますし、国際協調を無視した「アメリカファースト」の政策に世界は翻弄されています。「Make America Great Again.(アメリカを再び偉大な国へ)」と標榜しておきながら実際には「その程度の国」に向かう真逆の政権運営に対し、世界の国々はより良い方向へ戻るよう働きかけなければなりません。
トランプ大統領閣下。国際社会と協調することでこそ、アメリカはリーダーシップを保ち、偉大になれることと確信しております。
参考記事:
3日付 読売新聞朝刊14版3面 「米 内向きの離脱表明 政権内の反対押し切る トランプ氏産炭地にアピール」