コンビニが「買い物弱者」対策へ

 選挙カーが市街地を離れると、手を振る先は高齢者ばかり。埼玉県熊谷市の市議会議員選挙の手伝いとして、ウグイス嬢をしたときのことです。駅の周りは、買い物客やサラリーマンで賑わっているのに、車で少し離れただけで、人や店の数が一気に減ります。埼玉県でも過疎化が進んでいる現実を目の当たりにしました。畑作業の途中に顔をあげ、手を振り返してくれるおばあちゃんはどうやって買い物をしているのだろうかと思いました。

 そのような人たちにとって嬉しいニュースとなるでしょうか。ローソンが来年度から、温度管理などの機能を備えた移動販売車を本格的に導入する、と読売新聞が伝えています。2018年度まで約400台を導入し、将来的には全国で1200台程度に増やすことを目指します。

 高齢化や過疎化が進むにつれ、スーパーやコンビニなどの日用品を買う場が減ってしまいます。しかし、その土地にはもちろん住んでいる人がいます。その人たちが近場で買い物ができない「買い物弱者」になってしまうのです。経済産業省は、商業施設や商店までの交通手段がないなどの「買い物弱者」は全国で700万人がいると推計しています。

 移動販売車の活用は、「買い物弱者」対策になるはずです。日用品を積んだ車が定期的に地域を回ってくれれば、高齢者が自分で遠くまで車を運転して買い物に行く必要もありません。販売日にいつも買いに来る人が来なければ、「何かあったのだろうか。様子を見に行こう」と異変に気付いてあげることもできます。便利に買い物ができるだけでなく、高齢者運転の問題や、新しいコミュニティー作りとしても一役買ってくれることでしょう。

 「過疎化」と聞いて、地方の田舎を想像しますが、そんなことはありません。首都圏であっても、駅の周り以外は過疎が進んでいる地域もあります。ミクロの過疎化が起きています。都市部での「買い物弱者」へも目を向けていかなければなりません。

 過疎化対策として、若者を呼び寄せたり、企業を誘致したりする方法もありますが、なかなか現実的とは言えません。それよりも高齢者ばかりの地域でどう生活していけるのかを考えた方がよいはずです。

 ローソンの移動販売車は4台にとどまっており、セブンイレブンでも35台、ファミリーマートは18台と、まだ数が少ないのが現状です。過疎地対策への一環ですから、企業だけに任せるのではなく、国からも補助を出すなど、協力して進めてほしいと思います。

参考記事:
18日付 読売新聞朝刊(東京13版)「ローソン移動販売本格化」4面(政治・経済)