おもいやりで救おう

 8月のある晴れた日、ゴミ捨てに玄関を出ました。すると近所に住む90歳のおばあちゃんが軒先の草むしりをしています。暑い中、作業が捗っていない姿に思わず「大丈夫ですか。代わりますよ」と声をかけ手伝いました。おばあちゃんは「助かります。ありがとう」と笑ってくれました。

 敬老の日の本日、総務省は日本の高齢者人口の推計を発表しました。65歳以上の高齢者が前年より73万人増の3461万人になり、過去最高を更新しました。女性にいたっては1962万人で女性人口の3割を超え、改めて超高齢社会であると感じました。

 読売新聞の『「年寄り」と呼ばないで』という記事には

厚労省が16年に実施した意識調査で「高齢者だと思う年齢」として最多だったのが「70歳以上」(41.4%)で、現状の「65歳以上」と考えている人は20.2%にとどまった。

高齢者の年齢を健康寿命に近い70歳を超えたあたりと考えている人が多いことがうかがえる。

とありました。調査対象が高齢者なのか、それ以外なのかによって意味合いが若干変わってくるものの、これまで国連が定義していた高齢者と現実との間に落差が生じています。

 確かに元気な高齢者が増えているように感じます。私が利用しているスポーツクラブには高齢者が多く、泳いだり走ったりと若者に引けを取りません。冒頭紹介したご近所さんも90歳と言われなければ、そうとは思えないほどです。そんな状況もあってか、筆者は高齢者に対しての思いやりをなくしてしまいそうになることがあります。電車で座っている時に高齢者が目の前に来ても、快く席を譲れない自分がいました。

 しかし、そんな心やましいことではいけないと反省しています。いくら「年寄りと呼ばないで」と言われても私たちより年配であることに違いありません。我々の世代が高齢者に思いやりを忘れてはいけない。そう思わせてくれたのは、冒頭のおばあちゃんです。草むしりが終わると麦茶とコロッケをくれました。自分にとってなんてない作業にこれほど喜んでくれたことに感激しました。

 思いやる気持ちで救われるのは相手ではなく、自分なのかもしれないと思う敬老の日です。

参考記事
19日付 読売新聞 13版 4面 『「年寄り」と呼ばないで』