「ジェンダー」配慮の今を考える

「ジェンダー」という言葉は、ここ数年で広く世間に浸透しました。それとともに人々のジェンダー意識には変化が起こっていると感じます。これまで、女性がするのものとして捉えていた、メイクや脱毛など美容の分野においては顕著にその捉え方に変化が見られます。4月3日付の朝日新聞夕刊によると、男性の脱毛志向は高まりを見せ、縮小傾向にある女性と反対に市場規模が4年前の倍近くになるなど拡大を続けているそうです。要因としてコロナ禍でのマスク着用が求められ、手入れが煩わしくなったことが挙げられていました。その他にも、近年のK-POPをはじめとする韓国文化への関心の高まりやSNSを通じた美容系インフルエンサーの活動も要因として考えられるでしょう。このように社会の流れに応じて、新しいジェンダー意識が形成されてきています。

 

そんななかで、4月2日付の読売新聞夕刊で気になる記事を見つけました。幼児期からのジェンダー配慮に取り組む保育園を紹介し、これまでの「ピンクは女の子」「ライオンのシールは男の子」と決めつけるのではなく、その子ども自身の意思に基づいて対応していることが報じました。そこで勤務する保育士にも配慮が行われているそうです。この記事を読んだ筆者の母が、保育士として働く友人の話をしてくれました。その内容は下記のようなものでした。

 

その保育園には、従来の考え方で言う「女の子っぽい」ものを好む男の子がいる。その子どもの意思を尊重しようと、保育士の間で情報を共有し、その子らしくいられるサポートを検討し、対応している。

 

この話を聞き、幼児期からのジェンダー配慮は自身の身近なところでも進んでいると感心する一方、母と意見を交わす中で、果たしてこのような配慮が本当にその子どものためであるのかと言う疑問が生まれました。子どもにとって、その選択や行動にジェンダー自認は全く関係していないかも知れないからです。

 

ただ、その時々で目についたものを選んでいるかも知れない。そう考えると、「ジェンダー」という概念への理解がまだない幼児期に大人の認識で対応を行うことは良いことであるは言えないのではないか。その配慮が逆に、無意識のうちにその子自身のジェンダー形成に影響を与えてしまうのではないか。そんな疑問が生まれ、ジェンダー配慮の可能性と難しさを考えさせられました。

 

ジェンダーの役割などの認識は子どもが過ごす環境の中で学び、少しずつ形成されていきます。その時期に、ジェンダー配慮をすることで認識の形は変化していくでしょう。しかし、その仕方や程度は慎重に考えなければなりません。やり方次第では、その子どもに与える影響はかなり大きいものになり得てしまうからです。

 

ジェンダー平等が叫ばれる中で、その実現に向けた試みが各方面で行われています。それは、筆者自身のこれまでの学校生活の中でも感じてきました。しかし、具体的な取り組みにはまだまだ課題があり、ジェンダー意識の捉えかたの難しさを感じています。

 

参考資料

2日付 読売新聞夕刊 (大阪4版)2面 「ええやん!かんさい ジェンダー配慮 幼児期から」

3日付 朝日新聞夕刊 (大阪4版)10面「脱毛ブーム 男性も」