高校1年生のときのことです。子宮頸がんワクチンを接種する前に、病院へ相談しに行きました。接種した同年代の女の子たちが苦しんでいるニュースが気になったからです。「接種時の痛みからくるストレス的な原因が強い」。そう看護師から言われましたが、私には納得がいきませんでした。母親と相談した結果、ワクチンは打たずにこまめにがん検診を受けることにしました。
27日、15~22歳の女性63人が、子宮頸がんワクチンの副作用で痛みや運動障害などの症状が出たとして、国と製薬会社を相手どって一斉提訴しました。
子宮頸がんは20~30代の女性に急増しており、毎年約1万人が発症しています。原因はヒトパピローマウイルス(HPV)とみられ、今回問題になっているワクチンはこの感染を予防するとされています。しかし、接種した人の中には、激痛や歩行困難、呼吸困難、色覚障害などで苦しむ人がいます。車椅子での生活を余儀なくされたり、寝たきり状態で長期入院したりすることもあるそうです。今年4月末までに約339万人が接種を受け、2945人から健康被害の報告がありました。
原告側は、症状の原因はワクチンの成分による副作用の可能性が高いと主張しています。国側は、成分が原因ではなく、接種時の痛みや不安などが身体に異常をもたらすとの見解を示しています。また、成分と被害の因果関係に科学的な根拠は認められていません。公益社団法人 日本産科婦人科学会は公式サイト上で、「ワクチンは生ワクチン(毒性を弱めたウイルス)ではありませんので、接種によって病気を引き起こすことはありません」としています。
原告側は生活補償のための賠償を求めていますが、それよりも治療法の確立と被害者支援を強く求めているそうです。原因がわからずとも、国が定期接種を推奨したワクチンで苦しんでいる女性たちが多くいることに違いはありません。「科学的な根拠がないから」と副作用の存在を頭から否定し、訴えをはねつけるのでなく、これからどう生きていくかを悩んでいる若い女性たちに助けの優しい手を差し伸べてほしいと思います。
そして、ワクチン接種を中止するのか、他の予防策を研究するのか。まだワクチンを打っていない女性への信頼できる説明も求められます。
参考記事:
28日付 読売新聞朝刊(東京13版)「ワクチン被害一斉提訴」1面
「『普通の生活返して』」39面(社会)
朝日新聞朝刊(東京13版)「子宮頸がん 初の集団提訴」38面(社会)
日本経済新聞朝刊(東京13版)「ワクチン接種で一斉提訴」38面(社会)