9月に入り、カナダ・バンクーバーの夏は終わりを迎えようとしています。7月ごろから始まった夏ですが、たったの2ヶ月で早くも冬への準備が始まっています。
初めての体験でしたが、夏が去るのを惜しむほど気温も程良く毎日がキラキラしていました。もっと海へ行ってサンセットを楽しみ、さまざまなアクティビティを満喫しておけば良かったと後悔しています。
一方で、自然環境は悲鳴をあげていました。山火事です。乾燥する季節に入り各地で発生しています。バンクーバーが位置するBC州でも数多くの山林が燃え、CBCによると、7日現在でも州内では約220件の山火事が起きているそうです。
今年7月19日にBC州のクイネルで起きた大規模な山火事は、同州の火災レベルにおいて2番目に激しいものだったとされています。気候変動が誘発する猛暑が山火事を加速させています。
山火事による影響はいくつかあります。
1つ目は、野生動物たちへの打撃です。火災により動物たちの生息地や食料源が奪われました。死に追い込まれた動物たちもいます。住む場所を失った動物たちは移動するしかありません。CTVニュースでは、この影響から人間が野生動物に遭遇する機会が増えると警告しています。
筆者もノースバンクーバーのリンバレーに下宿していた時に、実際に熊を2回見ました。そこまで大きくなかったので子熊だったのではないかと思いますが、路上に出されてあったゴミ箱をあさったり、路上に停められている車に触れたりと、筆者に害は及ばなかったものの、ものすごい恐怖を覚えました。
また、火災によって孤児になった野生動物を保護する施設がBC州には作られています。人間による保護が必要なほど、山火事の影響で親を失った野生動物が増えているということです。
2つ目は、人間への影響です。7月19日の山火事でも、煙によって大気の状態が極度に悪化し、近隣住民の健康リスクが高まっていることが報告されました。先週後半からピークの時期を上回る猛暑が続いたため、BC州の大部分は季節外れの乾燥が続いています。このため樹木は引き続き発火しやすい状態にあるそうです。
また、経済にも影響を与えています。樹木の損失に関する報告書によると、昨年、世界の森林火災による損失の半分以上をカナダが占めました。また、カナダで失われた森林の92%は火災によるものです。これは林業に多大な影響を及ぼしています。カナダ気候機関によると、2017年にBC州で発生した山火事の際には、最大40社の林業会社が倒産しました。止まらない山火事をどうにかしなければなりません。
気候変動の影響となっている二酸化炭素の排出量を減らすことが最も重要な解決策になると思われます。しかし、簡単なことではありません。時間もかかり、その間に多くの野生動物や人間、そして森林が苦しみます。
山火事の要因として人為的に引き起こされることもあります。当地ではキャンプ(アウトドア)が大好きな人が多いのです。筆者の身の回りにも毎週キャンプをする知り合い人がいます。その人によると、「不十分な火の管理や処理が山火事を生み出してしまう可能性もあるので、楽しむ分、火に対しては真剣にならなければいけない」と話していました。人為的な要因を減らすことが山火事を減らすことに繋げなければなりません。
カナダには山火事の危険度を示すパネルが各地に設置されています。8月15日にリンバレーで見た時には「HIGH」になっていました。現在は「LOW」に変わっていますが、油断は禁物です。
ノースバンクーバーのリンバレーに設置されている山火事の危険度を示すパネル=2024年8月15日、松本花音撮影
雨が多いことで通称「レインクーバー」と呼ばれるバンクーバーをあまり気に入っていなかった筆者ですが、早く雨の降る日々にならないかなと今は思っています。
参考記事:
・5月14日付、朝日新聞デジタル、「カナダで今年も大規模な山火事、一部は「制御不能」 煙は米国にも」
・7日付、CBCニュース、「Smoky skies blanket parts of central and northern B.C. as wildfires grow」
・2023年8月21日付、CTVニュース、「B.C. wildlife rehab centre prepares to take in animals orphaned or displaced due to fires」
参考文献:
・1月31日付、カナダ気候機関、「Canada needs to get ready for a future fraught with fire: How can the forest sector respond?」