先月14日、サッカーの欧州選手権で、スペインがイングランドを破り、単独最多4度目の優勝を果たしました。本大会では、スペイン代表の若手選手の活躍が目立ち、17歳のラミン・ヤマルが最優秀若手選手に、22歳のニコ・ウィリアムスがプレーヤー・オブ・ザ・マッチに輝いたのです。
先制ゴールを決めたスペイン代表のウィリアムス(左)とともに喜ぶヤマル=朝日新聞デジタルより引用
二人の若者には、アフリカからの移民家系の生まれという共通したバックグラウンドがあります。彼らの両親は、より良い未来を求めてスペインに渡りました。ラミンは、移民の多い労働者階級の地区に住み、コンクリートのコートでサッカーを始め、その才能を見出されました。ニコの母は裸足でサハラ砂漠を超えました。そして、ニコの兄イニャキが、父親代わりとしてニコを支え、現在ではともにアスレティック・ビルバオに所属しています。ニコはスペイン代表に、イニャキは自身のルーツであるガーナに敬意を表し、ガーナ代表になることを決めたのです。また、ニコは、ラミネの兄のような存在であり、コート外でも深く関わっています。
若い選手らが移民先の国で活躍することで、その国の誇りとなり、他の移民たちをも勇気づけるはずです。サッカーでは、選手またはサポーターによる人種差別的なチャントが度々起こっています。一昨年9月には、レアル・マドリードのブラジル人選手に対して「お前は猿だ」と揶揄するようなチャントが歌われました。サッカーのコート上だけではありません。肌の暗いコロンビア人の知人は、通りを歩いていると、向かいの歩道に渡ってまで避けられることが何度もあると言います。私自身も留学中に「中国人女」と突然叫ばれることがありました。移民に寛容だと言われるスペインであっても、人種差別ははっきりと存在しています。
そんななかでも、ラミンやニコがスペイン代表の赤いユニフォームをまとい、コートを駆けていく姿は、同じ境遇にある移民二世三世の人々に夢を与えると同時に、分断をも埋めていくのではないのでしょうか。
関連記事:
8月26日付 スポーツが一役買う? 多文化共生の実現 (後半) | あらたにす (allatanys.jp)
参考記事:
7月17日付 スペインV 最多4度目 サッカー・欧州選手権 14日:朝日新聞デジタル (asahi.com)
2022年9月21日付 ビニシウスへの差別チャント問題、スペイン首相がアトレティコ非難 写真4枚 国際ニュース:AFPBB News