産んでくれたら最大200万円相当の援助
これは、養子縁組のあっせん事業「NPO法人 全国おやこ福祉支援センター」のホームページで述べられている言葉です。予期せぬ妊娠をした人に対する出産費用の支援をPRするものなのですが、大阪市からは「200万円もらえるとの誤解を招く」として削除を求められています。確かに、誤解されかねない言い回しです。
養子縁組のあっせんは通常、児童相談所や民間団体での長期にわたる審査や面談などを経て進められます。たいへんな時間がかかり、養親として適しているかどうか、さまざまな面から「詮索」されるようです。そのうえ、あっせんされなかったり、断られたりすることも多く、縁組は思うように拡大していません。
それに対し、冒頭のNPO法人はインターネットを利用することでさまざまな手間を減らそうとしています。養親の希望者が職業や収入、育児支援者の有無などを「赤ちゃんマッチング コウノトリ」のシステムに入力すると、それらの情報が点数化されます。実の親は一覧化されたスコアを見て候補を選びます。その後で家庭訪問による審査もありますが、手続きの多くはネット上で済まされます。
このNPOはその効率性と手軽さを売りにしていますが、他の団体や専門家からは、養父母の条件は数値化してはかれるものではない、といった批判が多く出ています。それにとどまらず、「養父母になる」ための手続きに「効率」「手軽」といった言葉が用いられることに違和感を覚えてしまいます。
もちろん、望まない妊娠をした人からすれば、児童相談所などでの手続きは煩わしく、世間体もよくありません。人工中絶以外に手軽な道が残されていることは、非常にありがたいことでしょう。「中絶か子育てか」の二択だった選択肢が、「中絶か子育てか、養子縁組か」という三択に広がるのですから。
しかし、養父母になる過程に、「手軽さ」が必要なのでしょうか。時間をかけて審査するやり方に不信感を抱く人もいるとのことですが、一人の子どもの一生涯に関わる「親」を選ぶのですから、それくらいの手間をかけても当然ではないでしょうか。むしろ、「手軽さ」につられてあっせん業者を選ぶような夫婦に養親になってほしくないとまで感じます。
子育てにかかる手間や費用は、養子を探すそれよりもずっとずっと大きいはずです。養子を探すのにも、実際に育てるのにも、コストの支払いを惜しまない。そういった人こそが真に養親として適しているのではないでしょうか。
「赤ちゃんマッチング コウノトリ」のHPには、このような言葉が書かれていました。
あなたのほんの少しの勇気が赤ちゃんの命を救います
私には子どもがいません。子育ての喜びも苦しみも、想像することしかできません。それでも、「ほんの少しの勇気」だけで親になってはいけない、そう感じてしまいます。
参考:
19日付 読売新聞朝刊 14版 社会面 「ネット養子縁組 賛否」
「赤ちゃんマッチング コウノトリ」HP