各地で広まる太陽光発電の設置義務 今後の見通しは??

5月も残すところ6日となりました。間もなく今年も折り返し点、時の流れの速さを感じるとともに、蒸し暑い夏の季節がやってくると実感します。報道でも昨年よりも暑くなるともいわれ、エアコンは欠かせないのでしょう。こうした中、6月には大手電力会社10社で電気料金が引き上げられます。この背景には、5月まで出されていた政府の補助金が終了することがあります。高い地域では約600円、低い地域でも約350円の値上げが予想されています。この電気料金高騰の中で、期待されるのが「再生可能エネルギー」です。

環境省によると、政府は2030年の電源構成の36%~38%を太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギーで賄うことを目標としています。経済産業省が24年3月に発表した資料によると、22年時点での再生可能エネルギーの電源構成比は21.7%で、そのうち9.2%が太陽光発電です。こうした政府目標の達成や持続可能な社会を目指すうえで、太陽光発電はますます注目を浴びています。東京都や京都府、神奈川県川崎市では、全国に先駆けて太陽光発電機の設置義務を発表し、神奈川県相模原市や千葉県松戸市でも導入を目指しています。

太陽光発電の大きなメリットは、「電気料金の削減」や「災害時の電力供給」といった点でしょう。現在の物価の高騰、地震や大雨など災害の頻発という問題を抱える日本において、さらには気候変動が進む地球全体のことを考えると、太陽光発電の導入は重要だと思います。

しかし一方で、「初期費用」や「維持・管理費」といった課題もあります。設置の際に約100万円かかり、年間に数千円の維持管理費が必要とされています。東京都のように財政状況の良い自治体では補助制度があるものの、人口減少が著しい地方地域では助成策が難しいのが現実です。この格差問題については何らかの取り組みが必要で、住民からの理解も得る必要があります。加えて、太陽光発電パネルの製造過程での二酸化炭素などの温室効果ガス排出量にも目を向ける必要があるのではないでしょうか。現状、製造ラインでの排出量は、太陽光発電を設置した際に削減できる排出量と同程度か、上回るという指摘を聞いたことがあります。日本の技術力を考慮すれば、製造ラインの排出量を減らしていくことは可能でしょうが、大量生産による環境への懸念もあり、これらにも注意を払う必要があると筆者は思います。

現在、全国約1000の自治体が2050年のカーボンニュートラルを表明していると環境省は発表しています。太陽光発電の強みや課題をしっかりと理解した上で、設置をどう進めるべきか考えていくことが、これからの時代を担う私たち若者にとってきわめて重要です。

 

参考記事

26日付 日経新聞朝刊 (12版) 7面(総合5)「家庭も新電力離れ鮮明 自由化後、初の流出超 燃料高、競争力維持できず」

26日付 朝日新聞朝刊 (13版) 4面(総合4)「風力発電の建設ラッシュ 脅かされるイヌワシ(フロントライン‐経済)」

25日付 読売新聞朝刊 (13版) 9面(経済)「物価上昇再加速恐れ 電気・ガス補助終了で」

参考資料

日経電子版「戸建てに太陽光、設置義務拡大へ 相模原市は27年度にも(24年3月25日)」

朝日新聞デジタル「電気・ガス料金、大手全社値上がり 6月請求分、政府補助金半減で(24年4月26日)」

環境省 太陽光発電の導入支援サイト

経済産業省 資源エネルギー庁「日本の多様な再エネ拡大策で、世界の『3倍』目標にも貢献(24年3月13日)」

TOKYO GAS「太陽光発電システムに維持費用はかかる?相場や機器の寿命も要チェック(最終閲覧日:24年5月26日)」