消滅可能性自治体を巡る報道、若年女性当事者はどう捉えるべきか

「自治体4割『消滅可能性』若者女性大幅減で」

「自治体4割『消滅可能性』20~39歳女性が50%以上減」

いずれも今朝、新聞を手に取って真っ先に目に入った記事の見出しです。

民間の有識者らでつくる「人口戦略会議」は24日、2020年から50年までに全国の4割以上にあたる744自治体で、20~39歳の女性人口が50%以上減少し、いずれ消滅する可能性があるとする分析結果を公表しました。

消滅可能性自治体を巡る報道の見出しに並んだ、「若者女性」という言葉が気になります。

朝日新聞によると、若年女性の割合を指標とすることについて、副議長の増田寛也氏は「人口学上は、若年女性の減少率を将来推計で考えるのは重要な視点だ」と説明したそうです。その是非はともかく、結果的に若者女性の動向が指標になった以上、「若者女性」に焦点が当たるのは、必然的なことなのかもしれません。しかしSNSでは「女は産む資源とも言わんばかりの報道」「女性に限定する理由はあるのか」といった批判や疑問の声が飛び交っていました。

筆者は若者女性に分類されます。当事者としてこの分析結果や報道をどのように受け止めるべきなのか、考えてしまいました。

東京で生まれ育った筆者にとって、「少子高齢化」や「人口減少」は教科書に掲載されている出来事のひとつでしかなく、喫緊の課題であると認識する機会はほとんどありませんでした。

地方と都市を巡る様々な問題を目の当たりにしたのも、大学進学後、地方でアルバイトをしたりインターンをしたりして、様々な土地で暮らす人との出会いを重ねた後のことでした。それまでは地方の暮らしについて興味を示さなかったばかりか、そこに「違い」があることにすら気が付いていなかったように思います。

確かに、満員電車に揺られながら電車内ビジョンで「人口減少」のニュースを見ても、ピンとはこないのはやむを得ません。しかし今や人口減少は、地方のみならず都市部でも問題視されています。報告書は消滅可能性自治体のうち、出生率が低いにも関わらず他地域からの人口流入が多い25自治体を「ブラックホール型」と分類しています。東京都内でも16区が該当しました。

分析結果と一連の報道を受けて、朝日新聞の真鍋弘樹記者は紙面に次のように綴っていました。

「計算上は妥当だとしても、『子どもを産むのが自分の役割なのか』と若い女性たちは思うだろう」

真鍋記者の指摘に共感を示す女性は少なくないと思います。実際に、パートナーの存在に触れた報道が少ないことにも疑問が残ります。

しかしながら正直なところ、いくら人口減少に警鐘を鳴らす記事が報じられても、それが一面に掲載されていても、学生生活を送るうえでこの類の話題になることはまずありません。

国や自治体の人口が減少することによって、間接的かつ長期的に生じる不利益こそ多々あれど、それらは個人にとっては見えにくく実感しにくいものです。例えばひとりの若者女性が出産することで何らかの課題が解決するような性質の話ではないことは明らかです。そのうえ、社会課題に目を向け、問題提議できる余裕などない生活を送っている若者も少なくないと思います。

そして何より、人口減少、とりわけ若者女性の減少は、若者女性の責任なのでしょうか。私たちは何を思えばよいのでしょうか。若者女性だけに責任をなすりつけられないよう、祈るばかりです。

 

参考記事:

25日付 朝日新聞朝刊(東京14版)1面「自治体4割『消滅可能性』」関連記事2

25日付 朝日新聞朝刊(東京14版)2面(総合2)「『消滅』恐れるより、個の尊重大切に 《視点》真鍋弘樹記者」

朝日新聞デジタル「消滅可能性自治体、分析指標は『若年女性』 増田氏『性別ではなく』」

25日付 読売新聞(東京13版)1面「自治体4割『消滅可能性』」関連記事2