続く80万人割れ ―忍び寄る少子高齢化社会(【連載】「静かなる有事」1)

少子化に歯止めがかかりません。昨年の出生数は約75万人と前年から2万人ほど減少し、1899年の統計開始以来過去最少となりました。厚生労働省が27日発表しました。2022年に初めて80万人を割り、官房長官が「静かなる有事」と発言するなど昨年の時点で大きな話題となっていました。16年に初めて100万人を割り込んでから、わずか7年間で80万人を切っており、減少幅が年々拡大しています。このままのペースだと、35年には出生数が50万人以下と一層の少子化が懸念されます。

出典:総務省「令和5年版高齢社会白書」

少子化だけであれば、経済成長の鈍化につながるものの、人口減少という一つの事象に過ぎません。しかしながら、我が国では少子化に急速な高齢化が伴います。内閣府によると、全人口に占める65歳以上の割合は1950年に約5%でしたが、2022年には、約30%まで上昇しました。このままいくと3人に1人が65歳以上の社会となります。また、1人の高齢者(65歳以上)を現役世代(15〜64歳)2人で支える構図となっています。1975年に現役世代10人で支えていたのを考えると、若い人々への負担が顕著になっていることがわかります。

高齢化に伴う生産年齢人口(現役世代)の減少は、慢性的な人手不足を招きます。ピーク時の1995年に8000万人もいましたが、2023年では7400万人となっています。すでに働き手確保が難しくなっており、コロナ禍を機に24時間営業を見直すコンビニなども出てきました。日本商工会議所の調査では、中小企業の65%が人手不足を実感しており、大企業より中小企業での人手不足が深刻です。

過疎化も進んでいます。総務省によると、他の地域と比べて著しく人口が減少して、生活環境などの維持が困難とされる過疎地域は国土の約6割を占めています。すでに全国の市町村のうち半数近くが過疎地域となっています。ただ、過疎地域の住民の人口が全人口に占める割合は9%で、都市へ人口集中が進む一方で地方人口が減少していることがうかがえます。道路・橋や水道・ガスなどの基礎的なインフラを維持するためのコストが膨らみ、こうした地域では社会生活を保つのが困難になります。過疎化に加え高齢化も深刻です。能登半島地震が発生した石川県では65歳以上の住民が半数以上という地域もあり、復興への大きな課題となりそうです。

出典:総務省「令和3年度版 過疎対策の現況」

【連載】「静かなる有事」

出生数80万人割れが二年連続で続いた日本。少子高齢化への警鐘が乱打されてきたのになぜ解決しないのか。連載の初回は、少子高齢化の現状を見渡しました。次回は、少子化の原因とされる未婚化・晩婚化を考えます。

28日付読売新聞朝刊(東京14版)一面「出生数最低75万人昨年、5.1%減 8年連続減少」

28日付日本経済新聞朝刊(東京14版)一面「出生数最少75.8万人 適齢期人口「2030年の崖」迫る 」

28日付朝日新聞朝刊(東京14版)一面「出生75.8万人、過去最少 婚姻数、戦後初50万組割る 23年」

総務省 令和3年度版 過疎対策の現況

内閣府「令和5年版高齢社会白書」