2月に入り、残された大学生活も2か月を切った。晴れて大学を卒業し、春からは社会人になります。新たな環境への不安と期待に、心が忙しい毎日です。社会人になれば、お給料を貰うようになります。しかし、同時に出ていくお金もあります。奨学金です。
卒業と共に、奨学金の返還義務が生じます。もちろん、借りたお金は返さなければいけません。けれども、借りたお金をそのまま返せばいいわけではありません。低金利ではありますが、利子がつくため、実際に返還する金額は借りた金額よりも大きくなります。
日本学生支援機構(以下、JASSO)では、大きく分けて3種類の奨学金が用意されています。
①給付奨学金
②第一種奨学金(無利子)
③第二種奨学金(有利子)
有利子の第二種奨学金の利率の設定方法は「利率固定方式」と「利率見直し方式」があります。令和5年3月に貸与を終了した場合、前者の利率は0.905%になり、後者では0.300%です。前者の利率固定方式で、大学4年間、月額上限の12万円を借りたとすると、卒業時には元本が576万円のところ、利子を含め、全部で約632万円に増えます。
①~③の奨学金のうち、一番緩い条件で受けられるのが第二種奨学金であり、筆者や周りの友人でも、この奨学金を受けている学生は多くいます。
では、それぞれ受給にはどのような基準が設けられているのでしょうか。給付奨学金では、年収380万円未満の世帯。家族構成などにもよりますが、貸与の第一種では、世帯の年間収入金額が530~900万円となっており、第二種の奨学金と比べ、家計基準のハードルが高くなっています。
しかしながら、その基準が、実際の現状に見合った線引きになるのかは分かりません。確かに、額面を見ることで、大体の家計を把握することはできます。ですが、金額もある意味では形式にしか過ぎません。世帯主がある程度は稼いでいるが、そのお金を一切、家に入れてくれないという場合には、実際の子どもの学費は足りていないのに、提出書類上では、経済的な支援が必要ないとして、はじかれてしまうこともあるでしょう。
もちろん、ひとつひとつの家庭の状況をつぶさに見て、JASSOが奨学金の区分を決めることはできません。それでも、制度のはざまに落ちてしまう人が出てしまうのであれば、それもまた問題です。
24年度から、給付奨学金の基準が現行の制度から拡充され、年収が約600万円の世帯のうち、子どもが3人以上の多子世帯と、私立理工農系の学部に所属する学生がいる世帯も給付奨学金の対象になります。
奨学金は、子どもの教育を受ける権利を守る制度でもあると同時に、卒業したての社会人に重くのしかかる「借金」でもあります。だからこそ、少数派であっても仕組みからこぼれ落ちてしまう人のために、第二種奨学金に限らず、ハードルを上げすぎることなく、少々緩やかな条件であっても良いのではないでしょうか。
参考資料:
労働者福祉中央協議会、「奨学金や教育費負担に関するアンケート調査(2022年9月調査)調査結果のポイント」
日本学生支援機構、「奨学金事業への理解を深めていただくために」
全国大学生協連、「特集 奨学金問題を考える」
参考記事:
日本経済新聞電子版、2023年3月7日配信「金利上昇、その時奨学金は? 知っておきたい注意点」
朝日新聞デジタル2023年12月11日配信、「多子世帯の大学無償化、対象は?額は?第1子が不要外れると対象外も」