京アニ事件 裁判員らの判断は死刑 今後の行方は

今月25日、京都アニメーション放火殺人事件の裁判員裁判で、青葉真司被告に死刑が言い渡されました。

本事件は2019年7月18日、青葉被告が京都市伏見区の京都アニメーション第1スタジオにガソリンをまいて火を放ち、スタジオを全焼させて36人を殺害、32名に傷害を負わせたものです。

検察は、結果の重大性、計画性と悪質性、遺族や被害者の処罰感情などを理由に死刑を求刑していました。一方の弁護側は、絞首刑による死刑は残虐な刑罰であることや、事件当時の青葉被告の責任能力が低下していたことなどを理由に、無罪もしくは刑の軽減を求めていました。なお青葉被告の弁護人は26日、判決を不服として大阪高裁に控訴しました。

 

裁判の今後の行方はどうなるのでしょうか。

 

まず裁判員裁判の対象は地方裁判所での刑事事件に限られるため、高裁以降は職業裁判官のみで審理されます。高裁や最高裁において、必ずしも裁判員裁判の結論を維持しないといけないわけではないため、判断が覆る可能性もあります。

 

実際に、最終的な結論が裁判員裁判から変更された事件もあります。2015年2月3日に最高裁で決定した2つの事件は、裁判員裁判で死刑とされていましたが、最高裁は無期懲役としました。

このうちの1つ「松戸事件」は強盗殺人事件で、被害者が1名であり殺害を計画的に実行したとは認められず、殺害態様の悪質性を重くみることにも限界があると結論づけています。

参考:『死刑を考える』、筆者作成

 

京アニ事件の青葉被告は控訴して裁判を続ける理由として、「(裁判を)続けないと発信ができないこと」を挙げていました。

確かに、日本では死刑囚が面接や手紙のやり取りをできるのは原則として家族などに限られ、外部との接触は事実上制限されています。

アメリカなどでは、死刑囚とジャーナリストとのやり取りが活発です。米オクラホマ州では、事件関係者やジャーナリストなどの死刑執行への立会いが認められています。またカリフォルニア州では最大50人までの立会いが許可され、ジャーナリストは死刑囚に対して、写真撮影やレコーディングも含めたインタビューもできます(本人の了解が条件)。

 

今回の放火殺人事件では、起訴から初公判まで約3年がかかり、地裁での審理は143日の長期にわたりました。事件の遺族には、控訴によりまた長期間苦しまないといけないとする方もいます。

青葉被告が「発信」を理由として裁判の継続を望んだのであれば、今後何が語られるのか。注目が集まります。

 

【参考記事】

2024年1月26日付 読売新聞東京朝刊 29面「京アニ放火殺人 判決要旨」関連記事1面

【参考資料】

須藤純正『死刑を考える』金融財政事情研究会、2022年

京アニ放火殺人事件の裁判 青葉真司被告に死刑を求刑 検察 | NHK | アニメ会社放火

京アニ事件、青葉被告側控訴 「死刑判決、厳粛に受け止める」 記者と面会:朝日新聞デジタル (asahi.com)

裁判例結果詳細 | 裁判所 – Courts in Japan

京アニ放火殺人事件 青葉被告の弁護側が控訴 地裁判決は死刑 (msn.com)