自動運転バスが救世主に!?  運転手減少の歯止めとなるか

先日、数年ぶりにバスを利用したときのことです。バス停に向かうと、今までは1時間に最低でも3本あったバスの運転本数が、1本だけになっていました。携帯で事前に調べず、昔の記憶だけで向かってしまい、バス停でひとり時間をつぶすことに…。こうしたバス便の減少は日本各地で起き始めており、背景にあるのが「運転手の減少」と「赤字路線」です。

昨年10月の国土交通省「国土幹線道路部会 ヒアリング資料」によると、輸送人員の減少がバス業界の厳しい経営環境につながっています。加えて、新型コロナウイルスの影響やガソリンの高騰も関係し、バス業界の赤字額は4000億円にのぼっているともいいます。運転手の減少には2024年問題も影響し、30年までには必要な人員12万9千人に対して実働が約9万3千人になるとの試算も示されています。3万人以上も足りないことになり、今後さらに深刻化することが見込まれています。

駒澤大学近くのバス停。今は1時間に2本だが、今後減らしていく可能性がある。(=筆者撮影)

こうした中、運転手不足などを改善すべく「自動運転技術を搭載したバス」の利用が検討され始めています。例えば、神奈川中央交通のバスが平塚市で自動運転の実証実験を始めたと昨日の読売新聞の地域面で紹介されていました。2月2日までの期間で課題などを洗い出し、今後の実用化を前向きに検討していきます。また、埼玉県にある筑波大学構内でも自動運転バスを取り入れた実験が産学官連携で始まっているといいます。ただ、どちらも国交省のあげる自動運転車の定義では、ドライバーの監視が必要なレベル2の段階で、完全自動化にはまだまだ時間がかかりそうです。

 

自動運転バスの普及が人手不足の改善に必ずしも繋がるとは限らない現実もあります。先に挙げた通り、どのバス業者も実証実験の段階で、本格的な運用がいつになるのかわかっていないからです。また調べていく中で、「最低賃金での労働環境」などバス運転手の方々の厳しい労働環境も見えてきました。こうした問題しかり、バス利用を拡大させるべく市民に呼び掛け、今後のバス事業の在り方について議論の場を設けることが欠かせません。また外国人を雇用することも考えられます。高齢者が多くなる国内で、バスの需要は必ず高まっていきます。供給が追いつかない事態が起こると筆者は思います。「高齢化」や「少子化問題」などが影響しあうなかで、課題が山積する人やモノの運送事業に対して、国はさらに対策を講じていくべきでしょう。

 

【参考記事】

23日付 読売新聞朝刊‐神奈川地域面(13版) 24面「自動運転バス 平塚で実験」

22日付 日経新聞電子版 「前橋市や群馬県渋川市、2月に自動運転バスの実証実験」

【参考資料】

国土交通省(令和5年10月5日)「国土幹線道路部会 ヒアリング資料」(最終閲覧日:2024/0124)

国土交通省「自動運転車の定義及び政府目標」(最終閲覧日:2024/0124)

ケータイwatch 「筑波大で自動運転バスの実証実験、道路のセンサーと連携したレベル2の自動運転」(最終閲覧日:2024/0124)