署名で文章を書くということ だからこそ得られるもの

 

筆者に残された、あらたにすの活動期間はあと半年。3年半ここで活動をしてきて感じる、「署名記事を書く」ということの面白さ、怖さ、得た力をまとめてみたいと思います。

初めて投稿したのは大学3年生、20歳の時。何度も「プレビュー」を確認し、どきどきしながら「公開」ボタンを押したのを覚えています。誰に読まれるかわからない。思いもしなかった誰かを傷つけるかもしれない。誰かに強く批判されるかもしれない……投稿してからは何度もTwitterfacebookを確認しました。

ほとんどの記事は炎上するようなことはありませんでしたが、時々、思いがけず波紋を広げてしまった仲間もいました。かつての国民的アイドルグループの人気の落ち込みについて、別のグループと比較しながら分析をした学生の記事については、いくつかのネット掲示板でスレッドが新設されました。彼の大学、学部、さらにはSNSなどから拾ってきたのか、本人の顔写真まで晒されてしまいました。

また、外来種問題について考えた学生が、その記事じっくり考察した別のネット記事で批判されたり、ネットで話題の「ヒス構文」から虐待について考えた学生の記事は思いがけずネット掲示板で拡散されたりすることもありました。

今でも、文章を書くとき、とくに社会に向けて問題提起するような文章を書くときは非常に気を遣います。多方面からのあらゆる批判を予想し、あらかじめ反論を用意しておく。根拠とした情報源の信ぴょう性を確認する。使った言葉が誤用でないか調べる……正直、かなり疲れるし、投稿日が嫌になることがしばしば、いや、ほとんどです。初めの頃は、投稿のために丸1日パソコンと向き合い頭を悩ませていました。

しかし、こうやって文章を書いてきたからこそ、培った力、学んだこともたくさんあります。例えば、自分の文章を何度も読み直すことで、批判的に物事を捉える力、物事を論理的に評価する力、説得力のある文章を書く力、思いを言葉にする力は確実に伸びました。また、論を組み立てるためにたくさんの資料に目を通すことで、新しい発見をしたり、視野が広がったり、語彙力が上がったり。少しずつ、玉石混合のネット記事を取捨選択できるようにもなりました。

の中に発信するという緊張感の中で考えを整理することで、より自分の意見根拠を持った強固なものとなりました。また、当時は苦しくとも、今見返せば、自分の思考がしっかりとした形残るの達成感があるものです。かつての自分の思考に励まされることもあります。また、最近は自己紹介をするとき、自分のやりたいことや考えを報告するときに、記事を読んでもらうこともあります。

まだまだ、面白い文章、巧みな論考が書けるようになったと胸を張っていうことはできませんが、残り半年、自分の思考に、文章に向き合い続けていきたいと思います。