インターネット社会の今こそ、新聞とテレビの活用を。

読売新聞社は2023年3~4月に、デジタルと社会をテーマに全国世論調査を実施しました。その結果から、インターネットが人々にもたらしたジレンマが明らかになっています。

同調査では、世の中の動向を知るための情報の7割以上をネットに依存する人が全体の30%を上回ることが明らかに。中でも若年層(18~39歳)の割合は57%と高いことが判明しています。もはや、若者にとっての情報源は、新聞やテレビでなくなっていることは明らかです。

 デジタル化の進展については肯定的な見方が多く、社会全体が「良くなった」は50%で、「悪くなった」の19%を上回った。暮らしについても「良くなった」50%が「悪くなった」11%より多かった。(読売新聞「ネットの発信元証明「必要」90%、偽情報見分ける自信「ない」65%…読売世論調査」2023年5月11日)

この調査結果が示すように、デジタル化は社会の利便性を向上し、生活を豊かにしている側面があります。電子決済や手続きの簡素化、情報収集など活用方法は多岐にわたり、私たちのほとんどがその恩恵を受けています。今や生活する上で必要不可欠となったインターネット。そこには二つの落とし穴があるのです。

一つは検索・閲覧履歴などから、関心のある情報ばかりが表示され、ユーザーが偏った情報に包まれる「フィルターバブル」、もう一つは、自分の思考と似た情報ばかりに触れることで偏った考えが増幅される「エコーチェンバー」現象です。

同調査から、SNS等で自分の興味・関心に沿った情報が表示される機会が「多い」「どちらかといえば多い」と感じる人は63%を占めていることが分かっています。インターネットの特徴である「フィルターバブル」への自覚がある人は多いようです。

また、個人がネットで発信する情報について、「偏った情報や考え方に影響される人が増え、社会の分断が深まる」との回答は63%。一方で若い世代は、自分の関心のある情報が表示される機能を便利だと思う人の割合が70%に達しています。「エコーチェンバー」や「フィルターバブル」に代表される情報の偏向・狭小化には警戒しつつも、その便利さと快適さからの脱却が難しいことがわかります。

私自身もYouTubeやTwitter、TikTokなどのSNSを日常的に利用しています。そこでは次々と興味のある情報が表示されるため、気づけばかなりの時間を消費していることも。「フィルターバブル」の罠に陥っている一人なのです。SNSは、手軽な娯楽につきもの「依存性」が高いものです。それに友人と連絡を取り合うのにも欠かせない存在です。

情報の正確さより注目や関心を集めることを優先して広告収入を得る「アテンション・エコノミー」について「問題だ」とした人は8割を超えていることも明らかになった。(読売新聞「信頼性に不安増大、デジタル化は享受…「デジタルと社会」読売世論調査」2023年5月11日)

昨今、ビュアー数を稼ぐための悪質な「タイトル詐欺」を仕掛けるネット記事を多く見かけます。情報の正確性が担保されてない記事も多く、インターネットは情報収集において必ずしも信頼のおける媒体でないことは明らかです。

偏った情報に囲まれ、情報の正確性が揺らいでいるこの時代に、一度新聞やテレビに立ち返ってみることは有効な一手かもしれません。

こうした従来型のメディアは、多岐にわたる情報を発信しています。「オススメ記事」や「関連動画」の表示によって情報の幅が狭まる時代に、「偶然の出会い」はテレビと新聞でしか味わう機会が無いかもしれません。まるで、マッチングアプリのような要素を秘めています。素敵な出会いが眠っている場所かもしれません。

私は新聞を購読していますが、すべての記事を読んではいるわけではありません。それでは、時間がいくらあっても足りないからです。そこで効率の良い新聞の読み方として、以下の3段階で新聞を利用しています。

①見出しをチェック

②気になれば前文を読む

③全文読む

少しでも見出しが気になれば、中身をチェックしてみる。それだけで十分に面白い情報に出会えるはずです。紙での購読をしていなくても、多くの図書館や大学には、新聞が置いてあります。デジタル版やポッドキャストなど、媒体は多様化しています。

テレビも、とりあえず点けておくだけで、気になる話題が舞い込んでくる可能性があります。テレビが家になくても、スマートフォンやパソコンがあれば、Tver(ティーバー)等のサービスで簡単に視聴することができます。インターネットを存分に活用しつつ、従来のメディアに触れていくことが、視野を広げる鍵になりそうです。

旧来のメディアは「マスゴミ」と揶揄されることがあります。しかし、突き放すだけはもったいない。新聞やテレビから得られる有益な情報は少なくないはずです。

 

 

参考記事

読売新聞(2023年5月11日)

信頼性に不安増大、デジタル化は享受…「デジタルと社会」読売世論調査 : 読売新聞 (yomiuri.co.jp)

読売新聞(2023年5月11日)

ネットの発信元証明「必要」90%、偽情報見分ける自信「ない」65%…読売世論調査 : 読売新聞 (yomiuri.co.jp)

 

参考資料

エコーチェンバー‐げんしょう【エコーチェンバー現象】 | デジタル大辞泉 (japanknowledge.com)