この画像は、新潟県長岡市の山古志地区の民間団体が販売しているデジタルアート(NFT)です。NFTとは、複製も改ざんも出来ない一点ものを言います。投機目的で売買されることも多いNFTですが、この作品は、地域の「電子住民票」でもあると言うのです。いったいどういうことでしょうか。
2004年の新潟中越地震の被害を受け、人口が800人にまで減少した中山間地域。そんなコミュニティーを盛り上げたいと発足した住民団体「山古志住民会議」が注目したのが「デジタル住民」でした。地元特産の錦鯉をモチーフにしたNFTを電子住民票として有料で発行し、世界中の人にデジタル住民になってもらいます。それによりファンを増やし、町おこしにつなげようというのです。2021年から売り出した電子住民票は国内外を問わず注目を集め、今では地域の人口を上回る1000人以上がデジタル住民になっているようです。
一般的な住民とは異なり、自治体の行政サービスは受けられませんが、そこに住んでいない人でもネットを介して地域と繋がりを持つことができます。実際に、デジタル住民と地元住民との交流会が開かれたり、電子住民票を持つ人同士でオフ会が開かれたりと、輪が広がっています。移住には至らずとも、実際に山古志に「帰省」するデジタル村民は少なくないようです。
筆者は以前、「おてつたび」というサービスを利用して、縁もゆかりもない離島に一人旅したことがあります。(“おてつたび”してみませんか? (甑島滞在記・前編) | あらたにす (allatanys.jp)都会とは違った空気と時間が流れていて、のびのびと過ごすことができたうえ現地の知り合いも得られ、第二の故郷ができたような感覚になりました。
大都市の近郊で育ち、祖父母の家も都市周辺という筆者は、都会以外で暮らしたことがありませんでした。以前から地方の暮らしに興味を持っていた一方で、行動に移すハードルは高く、きっかけがなければ踏み出せなかったでしょう。同様の思いを抱えている人は少なくないのではないでしょうか。
デジタル住民になる条件は一つ、電子住民票を兼ねたNFTを購入するだけです。山古志のものは1万五千円前後で手に入れられるそうです。他にも、読売新聞オンラインでは石川県加賀市や静岡県松崎町でのデジタル住民の募集が紹介されており、今後も増えていくでしょう。
デジタル住民の制度は、地域とのゆるやかな繋がりを作り、地方移住のきっかけ作りとして魅力的だと思います。皆さんも第二、第三の故郷を探してみてはいかがでしょうか。
参考紙面:
・過疎の自治体「デジタル住民」で町おこし…電子住民票を発行、地域づくりに「投票権」 : 読売新聞 (yomiuri.co.jp)
・山古志にお試し移住 NFTアート買い「デジタル住民」神奈川の一家:朝日新聞デジタル (asahi.com)
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