25周年モー娘。から探る アイドル長寿の秘訣とは?

男性アイドルグループKing & Princeから3人のメンバーが脱退することが発表されました。結成から7年余り。どうやらジャニー喜多川氏の遺志を継いで海外進出したかった3人と国内の活動に集中したかった2人の間で意見のすれ違いが生まれていたようです。どんな人気グループとて活動を維持していくのは容易ではない。精神的にも肉体的にも限界のある人間を管理する芸能ビジネスの難しさを実感しました。

そんな不安定さに満ち溢れた芸能界ですが、一方では長年生き残り続けるブランドも存在します。男性であればKinki KidsやTOKIOなど。女性なら宝塚歌劇に加え、今年25周年を迎えたモーニング娘。も老舗の部類に入るでしょう。グループの内実は目まぐるしく変化し、総勢45人が在籍してきましたが、今も根強いファンに支持されています。

男性に増して賞味期限が短いとされる女性アイドル界において、なぜモー娘。は存在し続けられるのか。それはマーケティング戦略を着実に進化させてきたためです。新しいアイデアをたくさん試して注目を集めた黎明期。パフォーマンスの質を向上させた成長期。人気が安定して、姉妹グループが次々誕生した成熟期。歴史を紐解くと、プロダクト・ライフサイクルのセオリー通りの判断が積み重なってきたことが窺えます。

モー娘。はテレ東のオーディション番組をきっかけに97年に結成されました。実は歌と踊りからバラエティ活動までこなすマルチアイドルを長期的に育成する予定はなく、当初目指していた姿は普通の5人組歌手グループ。しかし、辣腕プロデューサーのつんく♂氏は従来の型にとらわれず、新奇なアイデアを色々試しました。

まずグループ名は「モーニング娘。」と命名します。一度聞いたら耳に残って忘れられないインパクトがあり、親しみやすさも感じるネーミング。そして、素人の未熟さを奇貨として、成長過程の裏側をテレビで売り出しました。若い子たちが協力し合い努力を重ね、時には悔し涙を流しながらもスターダムを駆け上がっていく。その泥くさい成長物語に人々は共感や感動、親近感を覚えていったのです。卒業と加入を繰り返す制度も定着し、人々は一喜一憂、心揺さぶられました。

画期的な活動形態につんく♂氏持ち前の作詞・作曲能力も相まって、00年前後には国民的な巨大ブームを巻き起こします。「どんなに不景気だって恋はインフレーション」「明るい未来に就職希望だわ」コミカルな歌詞とリズムは中毒性があり、何度も聞いてしまいます。

しかし、新奇性は消費されるもので長続きしません。モー娘。は一流の講師を招聘し、パフォーマンスの質の向上に取り組みました。それでも00年代後半はファンが減り続け、広報戦略的に生命線だった冠番組も消失。紅白歌合戦の出場も途絶えました。表面的には衰退の一途を辿っているかのように見えたかもしれません。しかし、歌とダンスという本質的な商品に魅力を感じるコアな信者を固めブランドの地位を確立させたこの時期は、グループの歴史上極めて重要な成長期だったと筆者は思います。

10年代は成長期に培ったスキルを武器としつつ、EDM曲やフォーメーションダンスを導入して、若い女性ファンの開拓に成功しました。AKBやももクロ、韓流などのライバル出現あるいは人気メンバーの卒業といった外部環境と内部環境の変化に影響されにくい成熟ビジネスを実現しています。その安定的な稼ぎをもとに、Juice=Juiceやつばきファクトリーをはじめとする姉妹グループも多数誕生。娘。を筆頭とするハロプロのコンテンツ力は一層増したように感じます。

導入期、成長期、成熟期という三段階はビジネスの王道です。宝塚が歩んできた道のりでもあり、AKBや乃木坂も必ず通ることになるでしょう。ただし、この理論には衰退期という続きもあります。モーニング娘。もジリ貧を強いられるのか。それとも発展して次の25年を迎えられるのか。行方がどうであれ、筆者は地道に応援し続けます。

 

参考資料:

6日付 朝日新聞朝刊(京都14版)28面「キンプリ 平野紫耀さんら3人 来年5月脱退」

 

先月ハロコンが開催されたNHK大阪ホール(筆者撮影)