「雑誌を買って読みますか?」
そんな見出しで始まる、8日付の朝日新聞の記事が目に留まりました。雑誌の購読率が低下している現状を読者へのアンケートで調べた記事です。結果は「雑誌を買っている人は45%で、全体の半数にも満たない」という厳しいものでした(下の図を参照)。2015年に行われた同様の調査では50%だったことから、雑誌離れは進んでいると言えます。
そして、若者の雑誌購読率はこの数字以上に落ち込んでいる可能性があります。若者世代の新聞離れを考えれば、アンケートに参加したのは高齢者が中心である可能性が否めないからです。回答した読者層は公開されていませんが、この紙面で意見を述べている人の年齢層を見る限り、20~30歳の人が1人もいませんでした。実際、コミック雑誌を除き、筆者自身も雑誌はほとんど読みません。周囲の友人も同様です。
世代の違いによる雑誌購読率の変化は、アルバイト先でも感じています。高齢者が多く訪れる地元書店で働いています。あくまで筆者の感覚ですが、この書店で一日に売り上げる出版物の3~4割ほどは雑誌で、その多くは40代以上が買っていきます。10代、20代で雑誌を買っていく人は見当たりません。一方、都内の駅構内にある書店で働く友人に雑誌の売れ行きについて聞くと、体感で1割だと言っていました。年齢層による違いは確かにあるようです。
若者世代に、なぜこんなにも雑誌が読まれなくなったのでしょうか。原因の一つは、インターネットの普及にあります。無料で手軽に情報を得られる世の中で、お金を払ってまで得たい情報に求める水準が上がってきているのでしょう。筆者自身も、高いものだと1000円以上もする雑誌を買うのには抵抗感があります。では、減少する雑誌需要に歯止めをかける方策はあるのでしょうか。
雑誌の購読率を高める方法として、雑誌のサブスクリプションサービスが注目されています。「dマガジン」では、月500円ほどで80社、1000誌以上の雑誌を全て読むことができます。メジャーな雑誌の多数を購読できるほか、対象には定価が500円を超える雑誌も含まれてお得感満載です。売り上げは今伸び悩んでいるようですが、電子書籍の普及に伴い、さらに利用者を増やしていけるサービスだと思います。
また、付録をつけることで売り上げを伸ばすアプローチもあります。例えば、「Vジャンプ」という雑誌の付録である遊戯王のカードは評判がよく、高値で取引されるようです。多くのカードを手に入れるために複数購入する人も珍しくありません。そのような雑誌は人気の高さから予約できないことすらあり、私の働く書店でもよく購入制限が設けられます。バックや化粧品、トレーディングカードなど、その付録のほとんどが限定品なので、普段雑誌に関心のない人も買ってくれるのです。
このような時代の変化に合わせた手法によって売り上げを伸ばす雑誌は少なくありません。誌面の充実や内容の向上も重要ですが、既存の読者の流出を防ぐだけというのでは先がありません。重要なのは、雑誌を購入するハードルを下げたり、特典を付けたりするなど新たな読者を呼び寄せるアプローチではないでしょうか。
若者世代は、昔に比べ雑誌に触れる機会が減ってしまっています。出版界が今後も生き残っていくためには、無料の情報に慣れ親しんだ若者世代を取り込むための工夫や付加価値が欠かせません。いったん雑誌を手に取ってくれさえすれば、付録の有無にかかわらずまた買ってくれるかもしれません。
参考記事:
・8日付 朝日新聞デジタル「(be between 読者とつくる)雑誌を買って読みますか?」
・8日付 日経電子版「電子雑誌のサブスク正念場 プラットフォーム再興なるか」