参議院選が近づき、各党は公認候補のアピールに勤しんでいます。一票を手にする国民にとっては、自身の考えを社会に反映する機会が近づいているともいえるでしょう。
「社会で自分が関心ある問題を解決するにはどうするべきか」。こういった社会課題へのアプローチで最初に思い浮かぶのは選挙でしょう。社会を支える法律や政策を決める人々を選ぶ、ある意味で政(まつりごと)への直接の意思表明であるためです。
子育て、経済政策…各分野での公約を比較し、自身の考える社会像に近く、賛同する候補者に「託す」というイメージです。
一方で、これだけでは社会のひずみから発生する多くの問題にまで触れる機会は少ないと思います。少数の者が疑問を持ちながらも見過ごされている、しかし確実に変えていかなくてはいけない問題。そういった出来事は数多く存在します。当事者が心の中で抱えているかもしれない、まだ可視化されていないだけのものもあるでしょう。
では、そういった社会課題を俎上にのせて議論を起こし、良い方向へと変えていくにはどうするべきなのでしょうか。
筆者は答えの一つに、「公共訴訟」の支援という選択肢があると考えています。
公共訴訟とは、個人の権利回復を求めるだけでなく、社会の仕組みを変える目標も持ちあわせた訴訟を指します。「権利」に焦点を当てている裁判が主で、憲法が争点となることが少なくありません。
過去の「らい予防法違憲国家賠償請求」「一票の格差」「薬害」「在外日本人選挙権」といった歴史に残るような訴訟もこれにあたります。
当事者が起こした裁判が幅広い議論を呼び、社会を動かすというサイクルが生まれるケースが多く、まさに社会を変えるための裁判だと表現されています。
わかりやすい例をあげましょう。「在外日本人の投票の可否」に関する訴訟があります。これは1996年に、「日本国外に住む在外日本人に選挙権がないことはおかしい」として、国を相手どって起こされたものです。2005年に最高裁判所が違憲判決を下し、公職選挙法が改正されました。
メリットがある一方、これらには常に費用、時間、精神的苦痛という問題点がつきまといます。特に費用は提訴のカギになる部分です。ここが解決しない限り、スタートは切れません。
こういった事情を加味し、弁護士が費用を度外視して起こすケースが主です。ですが、印刷代などの諸費用だけでも数十万円もかかる訴訟を、長く善意のみで継続させるのでは根本的な解決にはなりません。負担が弁護団にまわっただけのことです。
こうした最大の問題である費用集めのため、近年クラウドファインディングを募るようになっています。「公共訴訟の支援に特化したウェブプラットフォーム」を掲げるNPO法人Call4が中心となった取り組みです。新型コロナが流行した際の時短営業命令に関する訴訟では目標額をはるかに上回る2400万円を集めたといいます。500円から寄付ができ、気軽にアクションを起こすことができるメリットはより広く知られるべきです。
自分は当事者ではないが、「おかしい」そう感じる問題を支援するには、クラウドファインディングの寄付で支える、メッセージで賛意を示すなどのやり方があるのです。この賛意を示すという行動は、長く争い、時に世間から非難を浴びる原告団の励みになるといいます。
社会で生きる中で、様々な疑問が生まれているはずです。小さな違和感を見逃さず、おかしいと感じたことには意思を示す。その方法は、実はさまざまな形で用意されています。
課題解決へのアプローチを一人でも多くの人が知ることで、「社会を変えるために動くことができる」という手ごたえを個々が感じられる社会に近づいていけばと思います。
【参考記事】
6月20日付 読売新聞朝刊一面 金融緩和 9党論戦 TV番組 自公など継続主張
6月20日付 日本経済新聞一面 物価高「許容できず」64% 内閣支持60% 6ポイント低下
【参考文献】
「知っておきたい!公共訴訟のキホン」 call4
裁判で社会を変えられるか?弁護士たちの新たな挑戦 NHK