筆者が20歳の誕生日を迎えた夜、友人から「彼氏ができたんだよね」とカミングアウトされました。友人は男性で、お相手は筆者が日頃お世話になっていた男性の先輩でした。あまりに突然の報告に、初めは冗談だと思ったものの、彼の表情は真剣そのもの。すこし後にことの重大さをようやく理解したことを覚えています。あれから2年弱の月日がたった今でも二人は仲良く過ごしています。
仲睦まじい筆者の友人カップル
昨日、5月17日は「国際反ホモフォビア・トランスフォビア・バイフォビアの日」でした。1990年5月17日にWHOが同性愛を国際疾病分類から除外したことを記念して制定された記念日です。以来、2001年4月にオランダで初めての同性どうしでの結婚が実現するなど、今日に至るまでに29の国と地域で同性婚が可能となっています。
しかし日本では同性婚を法的に認めていません。筆者の友人たちはどれだけお互いを愛し合っていても、結婚することはできないのです。どうして同性婚ができないのでしょうか。
現在、福岡地裁で開かれている「結婚の自由をすべての人に」九州訴訟で、国は「同性カップルは結婚をしている異性カップルと同等の社会的承認を得ていないため認められない」と主張しています。この主張の根拠はどこにあるのでしょうか。朝日新聞による昨年3月の調査によると、同性婚を法律で認めるべきと回答したのが65%で、認めるべきでないと回答した22%を大きく上回りました。特に若い層では肯定する意見が大多数を占め、18~29歳では86%が認めるべきと回答しています。多くの人が同性婚を認めるべきと考えているのは紛れもない事実です。また、仮に同性カップルが異性カップルと同等の社会的承認を得ていないとしても、それは国が同性婚を認めていないことにより、差別が生じているからではないでしょうか。
同性婚に対する対応が遅々として進まない国とは異なり、自治体や企業では同性パートナーシップ制度が拡充されつつあります。2015年に渋谷区と世田谷区で初めて成立した制度は現在209の自治体で導入されており、人口普及率は51.8%です。これは「各自治体が同性同士のカップルを婚姻に相等する関係と認め証明書を発行する制度」です。自治体により認められる範囲はまちまちですが、代表的な例としては公営住宅に入居することが可能になります。
また、民間企業でも結婚に同性パートナーを含めるケースも多くなっています。朝日新聞社は従業員の働き方におけるダイバーシティや人権擁護の観点から、結婚に同性パートナーシップを含むとし、2016年から届け出をした社員に対し、有給の結婚休暇や結婚祝金を与えるとしています。その他にも、丸井グループや楽天グループなど、様々な企業が性的マイノリティに配慮した取り組みを行っています。筆者の友人も、就職活動で企業選びをする際、性的マイノリティに対する取り組みを重要視していたそうです。
しかし、パートナーシップ制度には法的拘束力がありません。戸籍上は他人であるため、所得税の配偶者控除や健康保険の被扶養者など、異性婚なら受けられる恩恵は存在しません。また、同性パートナーは子供に対して共同親権を得ることができません。カップルのうち片方は法的に認められた親ではないことになります。子供がけがや病気などで病院に行く必要がある際、親権を持たない親が対応しようとしても断られるおそれがあります。その他にも、不十分な点をあげると枚挙に暇がありません。法律を作り、同性婚の道を開きましょう。それが最善の方法です。
昨年3月17日、札幌地裁は同性婚が認められないのは法の下の平等を定めた憲法14条に違反すると認定しました。同性婚は実現に向けて着実に歩みを進めています。一日でも早く、性的指向に関わらずすべての人に婚姻の自由が認められる社会になってほしいと願います。
参考記事
2021年3月 17日付 朝日新聞デジタル 「同性婚の不受理、初の違憲判断 札幌地裁「差別的扱い」」
2021年3月22日付 朝日新聞デジタル 「同性婚、法律で「認めるべき」65% 朝日新聞世論調査」
2022年4月22日付 朝日新聞デジタル 「「多くの人が生きやすい国に」福岡の同性婚訴訟、原告が思いを語る」
参考資料
朝日新聞社 社員の「結婚」に関する規定を改定 結婚休暇、祝金を同性パートナーにも
http://www.asahi.com/shimbun/release/2016/20160428.pdf
MARRIAGE FOR ALL JAPAN「【九州】第8回裁判報告!こうぞうさん、法廷でスピーチ」
https://www.marriageforall.jp/blog/20220421report/
みんなのパートナーシップ制度 「全国パートナーシップ制度導入状況」
https://minnano-partnership.com/