今日から縁もゆかりもない土地で、低い給与で長時間労働してもらいます。仕事内容はわかりません。
これをお読みのみなさんなら、進んでこの仕事をやりますか。筆者はとても怖くてできません。しかし、これが日本で横行しているのが現実です。そしてそれを担う外国人たちが増えつつある中、徐々にほころびが生じ始めてきました。現行の受け入れの仕組みでは限界なのでしょうか。それとも外国人は減らすべきなのか、考えていきたいと思います。ということで今日のテーマは「外国人の受け入れ」です。
20日の朝刊では、日本で働きながら技術を学ぶ「技能実習制度」を利用して来日した外国人が実習先から、失踪する事例が相次いでいることが掲載されました。法務省によると、今年の10月末までに約4930人がいなくなり、昨年の4847人を上回り、最多となりました。原因としては、よりよい待遇の職場を探していることが予想されています。実習先を変更することは制度上認められてはおらず、実習先も主に農業や漁業、建設業など、日本人が敬遠しがちな仕事のきつい単純労働に就いているケースが約17万人と非常に多く、給与面でも記事では当時の最低賃金のケースが取り上げられるなど、低賃金となっています。実習とは言いつつも、人手不足の単純労働の担い手を確保するための制度として利用されているのが現状です。
技術を学び、母国の経済発展に貢献してもらう国際貢献という制度本来の目的と、慢性的な人手不足の現場の実情との間で、かい離が見られ、制度のゆがみが発生しています。このような問題が発生している中でも、人口減少中の日本では、彼らに頼らざるを得ない状況はより一層深刻化すると見られ、政府は受け入れを拡大する方針です。紙面では日本の介護施設の経営者とベトナムで介護を学ぶ学生が紹介され、不足する介護人材として期待される姿が描かれています。その一方、午前8時から午後4時まで、最低賃金で農作業に従事する中国人女性の姿も描かれ、収穫した大葉に血が付くほどの過酷な仕事内容や受け入れ先でのセクハラと言っても過言ではない行為などが取り上げられています。慢性化する課題の改善が完了しないままに、受け入れを拡大すれば、失踪者も過去最高を簡単に更新してしまうでしょうし、失踪後、重大な犯罪に走るケースも想定されます。
今日はこの原因を考えていきます。このような外国人受け入れに関する問題が発生する原因は、国内外双方どちらにもいい顔をしようとするこの政策自体問題ではないでしょうか。外国人に日本の技術を学べるようにすることと、人手不足の産業を支援することは本来、全くの別問題です。それを一度に改善を図ろうとすれば、実習生の立場なら、職場環境が正確に伝わらないままに来日させられ、厳しい職場にいきなり就かされれば、逃げたくなっても当然でしょう。違法ではありますが、不法滞在している外国人が就労できる職場は日本にもまだまだ存在しており、そちらにいけば、生活の糧を賄うことも出来ます。滞在期限は3年まで、その期間でどれだけの技術が身に付くのかという点についても疑問が残ります。
これらも問題の原因になっていると考えられますが、主たる原因は実習生の本音ではないでしょうか。実習生の本音を想像してみると、彼らは技能習得よりも、出稼ぎを目的にしているのではないかと考えられます。稼ぐことが主目的のため、筆者にしてみれば、待遇が良い職場を求めて逃げだしてしまうことは、さほど不思議には感じません。出稼ぎとみれば、3年という数字も現実的に感じられます。受け入れ先にしてみれば、きつい仕事で日本人はやりたがらない、安い賃金で労働力が手に入る、人手はいくらあっても足りません。このような中、国が旗振り役となって外国人を連れてきてくれるなんて御の字でしょう。このように、政府の計画が建前として形骸化したとしても、両者の本音が合致していることでニーズが発生してしまっていることが一番の問題ではないでしょうか。
イスラム国などのテロが発生する以前から、日本は移民という言葉に嫌悪感を抱く人が多く存在しています。しかし、このような実習生たちも一種の「移民」です。そして我々の社会は、一部分であっても彼らの労働力に支えられていることは忘れてはなりません。外見上はあくまで実習生、実態は労働力の偽りの政策、言ってしまえば、実習生制度は裏の移民政策です。そんなものは今すぐやめて、労働力が必要ならば正々堂々と移民を受け入れるべきです。その方が国際的な評価も得られるはずです。それが日本の労働力を支えることにもつながりますし、第一に、それが約79万人もの日本で働いてくれている外国人への礼儀ではないでしょうか。
参考記事・資料:20日付朝日新聞朝刊 1面「外国人実習生 失踪者が最多」、3面(総合3面)「実習名目の労働拡大」
厚生労働省 報道発表資料 「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(平成26年10月末現在)より