浅草のメインロード雷門通り商店街のすぐそばに猫カフェ「きゃらふCalaugh」はあります。英語のイディオム「enough to make cat laugh」が由来です。意訳すると「猫さえ笑うほど、とてもゆかいな」。皆が笑いあう楽しい店になればという思いが込められています。
お店にいるのは11匹の猫たち。ご飯を食べたり、猫じゃらしで遊んでもらったり、時には寝床争いをすることも。自由気ままな愛らしい姿を見ることができます。様々な地域で生まれ保護されていた子たちですが、そのうち7匹は宮城県出身です。震災後飼い主が見つからなくなった親猫のもと、生まれながらにして野良猫になった子たちです。
青森県出身の店長平山龍さんは、東日本大震災の1年後、宮城県石巻市にボランティアとして足を運び、東松島市に個人で猫を保護する女性がいると知ります。環境省によると、震災発生から翌年9月まで仙台市を除く宮城県内で放浪状態となった猫は61頭、犬は243頭。飼い主が被災し一緒に住むことができないと判断された猫は38頭、犬22頭にもなりました。東松島市の女性の自宅では、そんな被災猫から生まれた子猫が約30匹保護されていたそうです。大の猫好きということもあり、当初はペットとして飼おうと2匹を連れ帰りましたが、「猫と一緒に何かしたい」とカフェを開くことに。ウェブマーケティングの仕事をしていた平山さん、カフェの経営経験はなかったものの大変だとは思いませんでした。2012年12月に開店してからも折を見ては東松島に出向き、新たな猫を迎え入れてきました。収益の一部を、個人で保護猫を飼われている方への支援にあてることもあります。
平山さんの方針で、被災地で生まれた猫であることを前面にアピールしたり、お客さんに伝えたりすることはありません。宮城で生まれたことが特別という訳ではないからです。どこで生まれても特別で、大切な家族です。オープンから今年で10年目。一昨年新たに家族を迎えようと宮城行きを考えていましたが、コロナにより断念せざるを得ませんでした。コロナが収束すれば、他の子も迎えに行きたいと話してくださいました。
保護猫が生まれる事情は様々で、震災に限るものではありません。20年度に全国で引き取られた猫は4万4798匹にものぼります。どこで生まれても等しく愛されますように。尊い命が守られる場所が増えますように。笑顔溢れるきゃらふにいると、そう思わざるをえませんでした。
参考記事:
9日付朝日新聞朝刊(東京13版s)「東日本大震災11年 いま伝えたい「千人の声」上」30面
参考:
環境省「東日本大震災における被災動物対応記録集」