10月17日、朝日新聞朝刊の朝日俳壇に心に残る一句がありました。「鳥渡る拉致のポスター色あせし」。詠んだのは大阪府の女性。どこかのお店に貼ってあったのでしょうか。北朝鮮による日本人拉致被害問題を風化させてはいけないという意気込みと現実へのやるせなさとが紙面を通して伝わってきます。
今月10日から16日までの一週間は北朝鮮人権侵害問題啓発週間でした。法務省のホームページには「北朝鮮当局による人権侵害問題に関する国民の認識を深めるとともに,国際社会と連携しつつ北朝鮮当局による人権侵害問題の実態を解明し,その抑止を図ることを目的として,平成18年6月に,「拉致問題その他北朝鮮当局による人権侵害問題への対処に関する法律」が施行され」たと、啓発週間が設けられるまでの経緯が書いてあります。
実際に法律を検索してみると、啓発週間については以下のように定められていました。
(北朝鮮人権侵害問題啓発週間)
第四条 国民の間に広く拉致問題その他北朝鮮当局による人権侵害問題についての関心と認識を深めるため、北朝鮮人権侵害問題啓発週間を設ける。
2 北朝鮮人権侵害問題啓発週間は、十二月十日から同月十六日までとする。
3 国及び地方公共団体は、北朝鮮人権侵害問題啓発週間の趣旨にふさわしい事業が実施されるよう努めるものとする。
第3項に「ふさわしい事業」とあります。今年は政府主催の国際シンポジウムが12月11日に開催されました。松野博一内閣官房長官兼拉致問題担当大臣の挨拶、被害者御家族からの「生の声」の訴え、パネルディスカッション等、いろいろ用意されていたようです。過去にはシンポジウムの他に写真パネル展やコンサートが開催されたことも。
シンポジウムのポスター。法務省ホームページより引用
法律が施行されてから毎年様々な事業が実施されているのが伺えます。しかし、国民の間で人権侵害問題についての関心と理解が深まっているかというとそうでもありません。新潟県では、拉致問題での県民意識調査を行っています。今年3月に公表された調査結果によると、「『北朝鮮人権侵害問題啓発週間』を知っているか」という問いに「まったく知らない」が51.1%、「聞いたことはあるが、内容までは知らない」が36.5%でした。つまり、国や自治体の啓発活動は国民にうまく伝わっていないということです。
今月18日に北朝鮮に拉致された田口八重子さんの兄、飯塚繁雄(いいづか・しげお)さんが死去したことは記憶に新しいと思います。拉致被害者の高齢化が進んでいくなかで、被害者家族だけでなく国民全体が、拉致被害問題に関心を持たなくてはなりません。国や自治体には、国民が関心を持つ事業に取り組んでもらいたいと強く思います。
参考記事:
12月19日朝日新聞朝刊21面(埼玉首都圏)「進む高齢化、家族ら悲嘆 拉致被害・田口八重子さん兄、飯塚繁雄さん死去 /埼玉県」
12月17日NHK NEWS WEB「拉致問題」は人権侵害の問題との認識 周知が課題」
10月17日朝日新聞朝刊、朝日俳壇
参考資料: