大学1年生のころ、アルバイトでマンションのモデルルームの受付をしていました。現在は住宅展示場内のモデルハウスで受付をしていますが、共通して言えることは「住宅は夢の詰まった商品」。きらきらと輝くお客さまの目。幸せそうな家族。「住」は生活の基本であり、住まいを提供する販売会社も消費者の生活を担っていることを自覚しながら営業をしている。そう信じていました。
それだけに横浜市都筑区の大型分譲マンション(全4棟)で基礎工事の施工不良が発覚した問題は、とてもショッキングでした。販売会社の三井不動産レジデンシャル(東京都中央区)などは19日にも、傾きが確認された西棟(11階建て)で、建物を支える杭が固い地盤に到達しているかなどを確認する地盤調査を再開します。日本経済新聞によると、国土交通省は建設工事を請け負った三井住友建設や、基礎の杭打ち工事を担当した2次下請けの旭化成建材について建設業法違反の疑いがあるとして、行政処分の検討に入っています。同省の担当者は「元請けや1次下請けによる工事の管理体制が適切だったかどうかも含めて調査し、処分を検討する」としています。
調査が進むなかで、住民の不安は募るばかりです。「信頼して大手の物件を買ったのに裏切られた気持ち。『安全です』と言われても、もはや信用できず、引越しを検討している」。憤りを隠せないでいます。三井不動産レジデンシャルは住民に対し、全4棟の建て替えを提案していますが、工事には3年以上かかるとの見方もあります。本当に住民にとって最善策なのかどうかは疑問です。
「どんな家に住もうかな」。消費者の輝く目からは、下請け会社のデータ改ざんなど見えるはずもありません。販売会社ですら見抜けなかった問題なら尚更です。マンションにしろ、一戸建てにしろ「住宅は人の命を預かる商品」であり、一生に一度の買い物だということ。たった一人の不正行為で会社ばかりか社会全体に甚大な被害を及ぼすこと。しっかりと考えていれば、今回のような不祥事は起こらなかったでしょう。夢を売る側が意識しなければならないことは何なのか。このニュースから深く考えさせられました。
参考記事:
19日付 日本経済新聞朝刊(大阪14版)1面「三井住友建など処分も マンション傾斜問題国土交通省が検討」3面「杭の状況 調査拡大 来月中旬にも住民説明」,「きょうのことば 建設業法」
同日付 読売新聞朝刊(大阪14版)31面(社会)「マンション傾斜 亀裂など異変 住民訴え 三井側北側の杭24本調査へ」