参院議員の事務所で働くインターンの一環で、10日に行われた「L G B Tに関する課題を考える議員連盟」の総会に参加する機会がありました。法律案の論議のなかで、自民党は「差別は許されないものである」という表現を加えた修正案を示しました。一方の野党側は性的指向、性自認を理由とした差別を禁止する規定や地方公共団体の施策を妨げないことを盛り込むように求めています。
性的少数者をめぐるL G B T法案の与野党協議で、立憲民主党など野党側は10日、自民党が修正案を示した「理解増進」法案に対する再修正案を提示した。野党の「差別解消」法案を踏まえ、差別禁止規定などを盛り込むよう求める内容。自民党はさらなる修正が可能かどうか検討する。
「理解が進んでいない中、差別禁止が先行すれば当事者がより孤立する」と理解増進を目指す自民党と、「理解増進だけでは差別はなくせない」という野党側。総会での各党の主張を聞いたうえで私は後者に賛成します。
何をしてはいけないという、具体的な規則がないと差別で被害を受ける当事者を守ることはできません。理解増進という聞こえの良い言葉で、実際に当事者を救える規定が欠けていることを誤魔化そうとしているように感じます。
しかも、一見プラスに取れる「理解」という言葉が、社会の流れにマイナスの作用をもたらすものになることも考えられます。今後、同性婚やパートナーシップ制度の導入を進めていく際、「社会の理解が追いついていない、理解を得るのが先」という理屈から、いつまでも先延ばしにする口実に法律が使われかねません。
理解が進んだ、追いついた社会とはどの段階を指すのでしょうか。現在は新聞、テレビなど既存メディアはもちろんのこと、YouTube、S N SでもL G B Tについての様々な情報に接することができます。社会の理解の進み方、考え方の変化というのは昔と比べ物になりません。少なくとも、何も知らないという状況ではないと思います。「差別禁止が先行する」と言い繕い、中途半端な状態にとどめてしまえば、社会の理解を深める妨げになると感じます。何より、実際に不利益を被っている当事者の方々を救う法律になるとは言えません。
自民党の法案の前提には「同性婚は相容れない」「パートナーシップ制度も慎重な検討が必要」とする考え方があります。この家族の在り方についての問題。いつまでも「慎重な検討」というばかりでは何も前進しません。3月22日付の朝日新聞世論調査では同性婚を法律で「認めるべき」65%、「認めるべきでない」が22%となっています。変わりゆく社会の声を受け入れていくべきです。
総会の後半では、性同一性障害特例法の「未成年子なし要件」削除を求める署名の提出がされていました。未成年の子がいる親は性別変更ができないというものです。この要件も「家族観」を理由に未だ改正に至っていません。親の性別変更と子の幸せは別問題ではないでしょうか。実際に法律や制度が整えられていないことで苦しんでいる人が多く存在します。法案がL G B Tの人たちを救うための、現段階より踏み込んだものになることを願います。
参考記事:
5月11日付 朝日新聞朝刊(東京14版)4面 「LGBT法案巡り、野党が再修正提案 差別禁止規定求める」
5月10日付 朝日新聞デジタル 「LGBT法、自民が修正案 法目的に「差別許されない」 早期成立へ詰めの協議」
https://digital.asahi.com/articles/DA3S14897525.html
3月22日付 朝日新聞デジタル 「同性婚「認めるべきだ」65% 18~29歳、86% 朝日新聞社世論調査」
https://digital.asahi.com/articles/DA3S14841361.html?iref=pc_ss_date_article