LGBTQ? まずは自分と向き合ってみて

「この人ってトランスジェンダー?Xジェンダー?」

「あれ?クイアってなんだったっけ?」

昨日、名古屋市の男女平等参画推進センター・女性会館「イーブルなごや」で開催された、セクシュアル・マイノリティについての講座に参加したときのこと。始まる前、LGBTQ+に関する知識を友人と確認しあっていました。スマホで調べると、トランスジェンダー、ゲイ、Xジェンダー、クイア、パンセクシュアル、アセクシュアル、ポリアモリー…セクシュアリティには数えきれないほどの種類があり、難しいね、まだまだ勉強しないといけないな、と話していました。

講座では、映画「ぼくが性別『ゼロ』に戻るとき 空と木の実の9年間」をもとに、アイデンティティーとどう向き合うべきなのかを考えました。この作品では、身体の性が女性だった主人公、小林空雅さんが、自身の性に違和感を覚え、胸や子宮を切除する手術を経て自分らしく生きることを模索していく9年間を細やかに映し出しています。自分は何がいやなのか、どう生きたいのか。自身と真正面から向き合いながら着実に前へ進んでいくたくましい姿に、胸を打たれました。

映画では、登場人物の性を説明するのに、先述した「トランスジェンダー」「ゲイ」などの言葉はあまり使われていません。代わりに使われていたのは、セクシュアリティを決める4つの要素を図であらわしたもの。性自認(こころの性)、性的指向(恋愛感情を抱く対象の性)、性表現(表現する性)、生物学的性(身体の性)の4つの要素を次のような矢印で示されています。

▲セクシュアリティを決める4つの要素。赤い点は、2021年1月31日時点の、筆者自身のセクシュアリティ。

しかし、これだけではその人の性は表しきれません。セクシュアリティは必ずしも生まれつきのものではなく、環境や本人の生き方によっても流動的に変化する可能性があるそうです。さらに加えて、この図の矢印の中の目盛りだって人それぞれです。何を女らしい、男らしいと思うかは十人十色であり、考える際の土俵が違うことも念頭に置いておかなければなりません。

「性同一性障害という考え方のプラス面とマイナス面は何か」。講座のなかでの問いかけにはっとさせられました。「性同一性障害」「トランスジェンダー」「ゲイ」といった概念があることは、当事者が自分らしさを考えたり、当事者のことを理解したりするためのヒントにはなりますが、カテゴライズされることで、「きっとこうなんだ」と決めつけ、かえって苦しくなってしまうこともあります。

「『LGBTQの話』にすると、他人の話になってしまう」

映画上映後、当事者の方が語ってくれました。「こういう人がいるんだなあ」。そんな「他者理解」「彼らの人権を守ろう」に終わるのではなく、「私はどうなんだろう」「隣の彼はどうなんだろう」と自分や身近な人のアイデンティティーと向き合うところから始めてみる。そこから初めて、様々な問題に取り組む際の当事者意識が生まれるような気がします。

講座前に感じた「たくさんの種類のセクシュアリティを勉強しなくちゃ」。確かにそれも良いことかもしれません。しかし、それよりもずっと大事なことを学びました。百人いれば百通りの違いがあるのは当たり前であり、一人一人の生き方を尊重することが、マイノリティにとってもマジョリティにとっても生きやすい社会へとつながります。私もまずは、自分自身のアイデンティティーとじっくり向き合ってみることから始めてみます。

 

参考記事:

30日付 朝日新聞朝刊(千葉)28面(2地方)「手続き軽減へ千葉市と横浜市連携 パートナーシップ宣誓制度」