【番外編】PCR検査手法、みんな違った

■年齢で異なる検査方法

昨年12月に筆者は新型コロナウイルスに感染しました。そのときの様子は、1月3日からの連載で記事にしましたが、今回は、そこでは書ききれなかった濃厚接触者についてです。濃厚接触者に認定された人は、特に症状がない場合でも、任意でPCR検査を受けることができます。そのときの流れや、保健所の対応について紹介します。

私が陽性と判明したのが12月19日でした。その日のうちに保健所からの聞き取りがあり、同居する母、妹、祖父の3人と友人が濃厚接触者に認定されました。

ウイルスを持った人と最後に会った日から14日間は発症のリスクがあると考えられています。そのため家族は、私がホテル療養に切り替えた21日から2週間後の1月4日までは外出自粛に迫られました。

任意でPCRを受けることができますが、たとえ陰性だと判明しても、外出自粛期間が終わるまでは外に出ることはできません。高齢の祖父がいることから、検査を受けることにしたそうです。その後、22日に保健所で検査を受ける運びになったそうです。21日からホテル療養をしていたため、筆者が詳細を聞いたのは自宅に帰ってからですが。

車で移動し、駐車場に設置されているブースで検査をしました。母と妹は唾液から検体を採取する方法でした。試験管のような入れ物に唾液を3センチほど入れます。検体を採取される側の苦痛が少なく、医療従事者の感染リスクが低いとされています。

私もこの方法でした。昨年6月2日より採用されていて、発症から9日以内であれば唾液から検体を採取することが可能だそうです。とはいえ、唾液を出すのに時間がかかる場合もあります。分泌促進のために、壁には梅干しの写真が貼ってあったそうです。

一方祖父は、別の方法でした。鼻の奥にスワブ(長い綿棒のようなもの)を入れて検体を採取します。鼻咽頭(いんとう)ぬぐい液を使う検査方法です。高齢者の場合は、薬の服用などの影響で唾液の採取が困難な場合があるため、この方法が適応されているそう。すべて無料でした。

全員の陰性がわかったのは2日後の24日。保健所から連絡がありました。その後も2度体調確認の電話があったそうです。最後に連絡があったのは1月4日の夜10時。「体調は大丈夫ですか。外出禁止はこれで終わりです」と告げられました。

陽性者に丁寧な対応をしてくれることは体験していましたが、濃厚接触者にもこれだけ細やかに対応されていることに驚きました。一つひとつの電話で、もしも濃厚接触者に異変があったときに察知することができます。命にかかわることだと感じました。

■PCRバスで検査 初診料かかった

発症2日前に会っていた友人は、少し離れた場所に住んでいます。そのため、管轄の保健所が異なりました。

最初に友人に連絡をしたのは、私の担当の職員でした。「PCR検査は任意ですが、受けますか」と尋ねられたそうです。受けることにしたため、住んでいるところの保健所に引き継がれました。

翌日、さっそく連絡が。体調について尋ねられ、その後検査についての説明がありました。23日に自宅近くの公園に来ているPCRバスで検査をしました。私や祖父の検体採取の方法とは異なりました。頬の内側の粘膜をこすって、プラスチック製の検体容器に入れる方法です。受付から終了まで、2、3分でした。

当日は自転車で。公共交通機関は利用しないように言われていて、徒歩、自転車、タクシーの選択肢がありました。タクシーを使うなら、感染の疑いがあることは伝えなくてもいいものの、窓を開けてもらうように運転手さんに頼むことを求められました。

私の家族は無料でしたが、友人は、初診料がかかったとのこと。検査自体は公費ですが。区と業務提供した病院の巡回診療所での検査となり、保険診療扱いということだそうです。感染の疑いがあるため、その場での小銭の受け渡しはリスクを伴います。その日は5千円を預かり金として回収されました。コンビニのレジ横にあるような募金箱に入れたそうです。後日残金を病院に取りに行くことに。まだ受け取りに行っていませんが、初診料は2、3千円で済むそうです。

 

▲友人が検査を受ける際にもらった預かり証。中央には、「¥5,000-」が確認できる。友人提供。

2日後、陰性だとわかりました。

友人も私の家族と同様、保健所から体調確認の連絡がありました。細かな連絡を欠かさない保健所ですが、内部で情報が共有しきれていないと感じた出来事がありました。検査した次の日に、「あなたは陽性者に認定されました」と誤った連絡が来たそうです。業務体制がひっ迫しているのだと改めて感じました。

■PCR検査に注目していきたい

コロナに感染したと近しい人に報告した際に、PCRはすぐに受けられたのか、と尋ねられることが多かったです。私自身も風邪だと思って病院に訪れて、すぐに受けることができて驚きました。

厚生労働省は、コロナとインフルエンザが同時に流行した場合、ピーク時に1日46万件程度の検査需要があり、54万件程度の検査能力の確保を見込んでいるそうです。昨年11月時点で発熱などの患者の診療や検査を行う医療機関として全国2万3755の診療所などが指定されていて、引き続き体制の整備を進めています。

最近は、唾液などの検体を自分で採取して送るところができるという自費検査が広まってきています。こちらは行政への届け出が義務付けられていないため、保健所が把握できなかったり、必要な支援を受けられなかったりする問題もあるそうです。

コロナに感染するまで、検体の採取方法に注目することはありませんでした。もしかしたら埋もれている問題があるかもしれません。今後もウォッチしていきたいと考えています。

参考記事:

9日付日本経済新聞朝刊東京12版 35面(社会)「若者の検査増が影響か」

9日付読売新聞朝刊東京13版 3面(総合)「コロナ病床逼迫 日本の弱点」

NHK ウイルス検査体制整備は 新型コロナウイルス