「コロナに振り回された2020」と題し、3回に分けてお送りすることを予定しております。前回の記事に続き、今回は緊急事態宣言下の暮らしを振り返りたいと思います。
4月。緊急事態宣言が発令されてから、スーパーは、いつも殺伐とした空気に包まれていました。薬局では、「マスクはもうないのか」「アルコール消毒液はいつ入荷するのか」と店員に詰め寄る人を見かけることも少なくありませんでした。得体の知れないウイルスを前に、誰もが不安を覚え、イライラしていたように思います。週に2回ほどの買い出しが本当に憂鬱でした。
「自粛警察」「他県ナンバー狩り」という言葉が生まれたのもこの時期です。事情も知らずに正義を振りかざされ、傷つけられる人の姿に心が痛みました。ニュースだけではありません。SNSでも、身近な人が友人を批判する様子を見かけることがありました。人によって違う「自粛」「不要不急の外出」の解釈を前に、社会の分断が進んでいくことに不安を覚えていたように思います。
これからどうなっていくのだろう。そう思って、テレビを付けても、新聞を開いても、なかなか有力な情報はつかめません。新型コロナウイルス対策に関する政府への批判が耳に入ってくるばかりでした。特に、検査数の少なさは、友人から次のような話を聞いて以来、最も気をもんでいたことの1つです。
ちょうどGWの時期のことです。友人の知り合いに、倦怠感、発熱、呼吸器症状を訴える人がいました。感染を疑い、病院に向かいましたが、PCR検査にはいたらなかったといいます。胸部CT検査で異常が発見されなかったためです。「もしまだ異常を感じることがあったら、GW明けに検査を受けたらどうか」と伝えられ、自宅に帰されたとのことでした。その後は、順調に回復したため、検査を受けることはなかったそうです。
調べてみると、ウイルス検査の要否などに関する意思決定を行う要素の1つとして、胸部CT所見の利用は認められていました。一方で、胸部CTで異常所見が認められないことが感染を必ずしも否定するものではないとされています。PCR検査体制が十分と言えない状況を受けての、暫定的な対策でした。ここまで医療提供体制は逼迫しているのか。検査を受けられない状況を思い知り、さらに不安が増した出来事でした。
更新され続ける情報に振り回され、テレビを見ては不安が増し、SNSをみては落ち込む日々。ついに、すべての情報を遮断し、ようやく冷静になれたように思います。結局は、外出を控え、マスク着用、手洗いうがいの徹底など基本的な予防策を日々講じる以外出来ることはない。そう結論付け、荒んだ気持ちが落ち着きました。コロナ一色となった緊急事態宣言下の生活。ようやく、正しくコロナを恐れる準備が出来ました。解除後はいよいよウィズコロナの生活が本格的に始まります。最終回では、解除後から今の暮らしを振り返ります。
参考記事:
日本経済新聞・読売新聞・朝日新聞 新型コロナウイルス関連記事
参考資料:
公益社団法人 日本医学放射線学会HP