災害リスク、「地名」にヒントあり

 

先週の金曜日、日本経済新聞朝刊に気になる記事がありました。東京面(地域面)に掲載されていた「災害リスク、地名にヒント 行政、住民啓発に活用 川崎市は辞典・冊子に」です。それほど大きい記事ではないのですが、これまで読んできたものとは違った視点から災害について書かれていて面白いなと思いました。

記事では、災害と地名の関係性について触れており、地名を見れば災害リスクがわかるといいます。例えば、長野県。木曽郡南木曽町では、過去に土砂流災害が度々発生していました。それは南木曽駅の裏側にある「蛇抜沢」、中山道にかかる「蛇抜橋」という地名からわかります。「蛇抜け」には土砂流という意味があるそうです。

この話を知り、先人の知恵ってすごいなと敬服しました。過去に起きたことを後世に伝えるため、土地に名前を付けておく。「蛇抜け」はさすがに元の意味を知っておかないと分かりませんが、私たちが何気なく暮らしている街の名前にも、もしかしたら先人の思いや警告が隠されているかもしれないのです。

筆者も地元対馬の地名を探ってみました。すると面白い企画が。平成20年10月に熊本市役所で開催された「災害の教訓と地名」というシンポジウムの資料が見つかりました。地理学専門の大学教授や熊本地名研究会など6人の講演者がいて、熊本や九州の地名と災害について話しています。

なかでも日本地名研究所長・谷川健一さんの「災害と地名」は、万葉集の時代まで遡って、関係性を探っています。

アズという地名は『万葉集』巻十四に「安受(あず)の上に駒をつなぎて」という歌が見える。崖の崩れた所をアズと呼んでいる。アズは阿須とも書く。埼玉県飯能市阿須や対馬巌原町阿須などは洪水による土砂の堆積地で、崩岸、または崩崖である。

 こんなところで対馬の地名を見るとは。しかも阿須にそんな意味があったとは思いもしませんでした。この地域に住んでいたわけではないのですが、小学校の通学範囲だったので身近な場所です。洪水が起きた時には、危険のある場所だと始めて知りました。

今回地元の地名を改めて見返してみて、由来を考えることの面白さに気が付きました。防災教育でも、地元らしさを生かせる内容があると面白いだろうな、とも。今後ますます注目されることを期待しています。

 

参考記事:

11月6日日本経済新聞朝刊東京面(東京13版) 「災害リスク、地名にヒント 行政、住民啓発に活用 川崎市は辞典・冊子に」

参考資料:

第 21 回熊本地名シンポジウム・第 12 回風土工学シンポジウム「災害の教訓と地名」