著名人の政治発言、だめですか

「役職定年」の年齢を過ぎても、政府の判断で検察幹部にとどまることができる検察庁法改正案に抗議する声がインターネット上で急拡大しています。きっかけは、8日に、衆議院内閣委員会で実質的な審議が強行されたことです。菅官房長官は11日の会見で、「内閣の恣意的な人事が行われるという懸念は当たらない」と反論し、今国会での成立を目指す考えを明らかにしています。

これに対して、9日以降、ツイッター上では、歌手や俳優ら著名人による「#検察庁法改正案に抗議します」といった抗議ツイートが相次いでいます。例えば、演出家の宮本亜門さんは「コロナ禍の中、集中すべきは命」と抗議の姿勢を明らかにしました。投稿件数は、11日午後8時すぎの段階で、680万件を超えるなど、その数は今なお増え続けています。

一方で、投稿に対する抗議ツイートも見られます。歌手のきゃりーぱみゅぱみゅさんが「#検察庁法改正案に抗議します」と投稿したところ、「歌手なんだから、本業に集中しろ」「政治に口出しするな」「失望した」などといった批判が寄せられ、結果的に、自らのツイートを削除することとなりました。

反論ツイートをした人のプロフィールをたどると、多くの人が、今回の件に関して、きゃりーぱみゅぱみゅさんと政治的立場が逆であることに気づきました。反論ツイートをした知人に話を聞いてみると、「著名人が問題提起することで、さらに問題が大きくなることを恐れた」という理由で、書き込んだようです。

もし、異なる意見があるならば、自らの考え、立場をしっかりと示したうえで、正々堂々と論じるべきでしょう。頭ごなしに否定しても、そこからは何も生まれないのです。

そして、著名人だから、政治を語るなというのは、お門違いです。歌手であろうと、俳優であろうと、国民の一人であり、有権者の一人であるという事実に変わりありません。政治は国民の生活に直結するものです。それを、私たちは、黙って見過ごすわけにはいきません。そもそも、国民、有権者が政治について語るのは当たり前の権利なのですから。

 

参考記事:

12日付 日本経済新聞朝刊 4面(政治)「検察庁法巡り論戦」

12日付 読売新聞朝刊 28面(社会)「検察定年 議論が過熱」関連記事4面

12日付 朝日新聞朝刊 25面(社会)「「#抗議します」 芸能人も次々ツイート」関連記事1、2、3、4面