「都会では 自殺する若者が増えている
今朝来た新聞の片隅に書いていた
だけども 問題は今日の雨 傘がない」
井上陽水さんの「傘がない」という曲の一節だ。最近、紙面を開く度にこの曲が頭の中で再生される。テレビでも同じだ。連日コロナウイルスに関連するニュースばかりで、疲れを感じている人も多いだろう。本当に注目するべきはコロナ関連のニュースだけなのだろうか。1972年にリリースした歌が、今の私たちに問いかけているように感じる。
日本を代表する映画監督、大林宣彦さんの死去。死因は肺がんだった。「時をかける少女」「ねらわれた学園」など、80年代のアイドルを主役にした作品を世に送り出し、「アイドル映画の第一人者」とも呼ばれている。彼の活動は80年代以降の監督たちに多大な影響を与えた。
彼の訃報は朝日新聞を除いて、まさに片隅にぽつんと載っていた。対照的にコロナウイルスによる肺炎で亡くなった志村けんさんは大々的に報道された。死亡を伝える記事は「新型コロナ」の大きな見出し。ネットでは彼の死を材料に、自説を主張する人が目に付いた。コロナへの不安や恐怖、関心がもたらした結果だろうか。とても残念な気持ちだ。
台風19号の被害を受け仮設住宅に入居する人は、1日時点でも11都県の8387人に上っている。昨年10月に列島を直撃した台風から半年。多くの被災者が今も元の暮らしに戻れていない。復興は果たして進んでいるのだろうか。国は彼らに対して、どのような支援を行っているのか。
首都圏の私立大学に入学した学生のうち、親元を離れて通う下宿生の1日当たりの生活費は730円で、過去最高額に比べると7割減っている。将来の進路をにらみ、奨学金を借りて上京する苦学生もいる。必死にアルバイトをして、家賃や食費も賄っている。金銭面に関するサポートは、特に首都圏の学生であるほど必須だろう。
いずれも朝刊の片隅に載っていた記事から引用した。一人ひとりが問題とする事例はいくつもあるが、そこには優先順位がある。苦学生にとってはコロナよりも「お金」、被災者は「安定した生活」かもしれない。
一方で、ネットでの感染者に対する誹謗中傷が目立っている。「コロナ」が最も重要な人からすれば「敵」に見えるだろう。それぞれの行動の背景も知らず、叩く必要性はない。「全人類の共通問題はコロナだけ」。そう思い込んでいる人が多いことに、危機感を抱いている。
参考記事:
朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞 各紙朝刊 新型コロナウイルス関連記事