「武漢人見つけたら3万円」
31日付の読売新聞朝刊にこのような見出しが載っています。新型コロナウイルスによる肺炎が社会問題になっている今日、武漢市を出た住民の処遇が注目されています。春節により旅行や帰省で市外に出たまま、23日の事実上の封鎖措置で自宅に戻れなくなりました。感染が全国に広がる中、世界中が不安に駆られています。
SNSでも中国人に対する風当たりは、少しずつ強まっているように感じます。「旅行に来る中国人はテロリストだ」「ウイルスを持ち込むために旅行しているのだ」等、偏見と侮辱に満ちたコメントで溢れています。しかし、これは旅行している中国人が悪いのでしょうか。批判されるべきは中国、日本政府の対応だと思います。
このような誹謗中傷は、2011年の東日本大震災後に発生した風評被害と似ています。福島第一原子力発電所の事故後、被災地の農産物や水産物などの食品は「食べてはいけない」という情報が出回りました。それにとどまらず、人権被害にまでエスカレートしました。
インターネットが社会に根ざしている現代では、いくら行政組織が迅速で正確な情報を伝えても、デマや風評を根絶することは不可能に近いでしょう。そこで問題になるのは、ネットユーザーのモラルです。
「もし、あなたの住む街が新型コロナウイルスの発祥地だったらどうしますか」
相手の立場になって考えてみれば、過剰な発言も控えようと思いませんか。ネットに書き込んだところで、現状は変わりません。個人の感情的な行動によって、他人を傷つけている可能性があることに早く気付くべきです。東日本大震災を経験した日本人なら、どれだけの威力を持っているのか分かるはずです。
私が未だに忘れられないのは、元サッカー日本代表の川島永嗣選手の合成写真です。ゴールキーパーである彼の腕を4本に合成した写真を、フランス国営テレビが「福島(第一原発事故)の影響ではないか」と発言しました。これは決して許されるものではありません。
個人的な意見を簡単に発言できる今日。そして、その発言は国内のみならず、海外にも影響を与えることがあります。相手の立場になって考えることは、ネットや日常生活において非常に重要だと感じます。
参考記事:
31日付 読売新聞朝刊13版7面「中国 締め出しの動き」
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