高校の時、淡く抱いた「海外大学進学」の夢。「日本の大学生は勉強しない」「大学は人生の夏休み」と言われて久しく、そうなるかもしれない4年間が惜しいと感じ始めていた頃、アメリカの大学生活に猛烈な憧れを抱きました。図書館に篭って机に齧り付き、幾冊もの本をあさり、英語漬けになる刺激的な海外の学生生活。しかし、憧れは「お金がかかりすぎる」という現実を前に、あっけなく崩れ去りました。
高校時代に留学に行っていたために卒業が1年遅れた高校の友人が「マレーシアに進学する」という話を聞いたのは、筆者が日本の大学に進学して1年が経った頃でした。詳しく聞けば聞くほど、彼女の選択の賢さに思わず唸り、たまらず筆者も昨年夏に1週間訪問しました。今回はマレーシア留学事情について、詳しくご紹介します。
■マレーシアという国
東南アジアのマレー半島南部と、ボルネオ島北部、その周囲の小さな島々からなるマレーシア。高温多湿な熱帯気候で、国土の7割は熱帯雨林で覆われています。到着が近づくと上空から整然と並ぶ油ヤシのプランテーションを確認できます。
国民の約70%はイスラム文化のマレー人で、約23%が仏教文化の中華系、約7%がヒンドゥー文化のインド系であり、キリスト教徒も全体の9%います。典型的なモザイク国家です。それぞれの母語が違い、また、かつてイギリスの植民地であったため、国全体では英語が使われるようになりました。独特の訛りのある「マングリッシュ(マレーシア+イングリッシュ)」ではありますが、ほとんどの人が英語を話すことができます。
冷戦のもとで比較的早い時期から西側陣営と友好関係を持ち、ASEAN(東南アジア諸国連合)の原加盟国でもあるマレーシア。一人当たりのGNI(国民総所得)は、東南アジア内でシンガポール、ブルネイに次ぐ3位。現在ASEAN加盟10カ国の総人口は約6.7億人で、アメリカの3.3億人、EUの4.5億人を上回ります。GDPなど経済規模では大幅に下回っていますが、人口増加を考えると将来的な成長が見込める巨大な市場といえます。友人は、3年間の発展の過程を自分の目で見ることでも、大きな学びを得られるだろうと期待していました。
■コスパの高い留学
ビジネスや世界基準の英語を身につけるためには、「英語を学ぶ」ではなく「英語で学ぶ」ことが効果的です。マレーシアでは低コストでその環境を揃えることができます。大学の学費は欧米の大学と比較すると約3分の1、生活費は日本の約3分の2。マレーシアの学士課程は3年間なので、その分総額を抑えられます。友人の住んでいた家賃4.3万円のマンションは、なんと家電やクイーンサイズのベッド付きで約38畳のワンルーム。最寄り駅まで徒歩5分、大学まで2駅。首都クアラルンプールまでは車で20分、電車で1時間の好立地でした。
アルコールや豚肉など、ムスリムのタブーである飲食物や乳製品などは割高ですが、1ヶ月にかかる生活費は7万円ほど。外食文化が定着しており、ローカル食堂では300〜500円ほどでお腹を満たすことができます。友人は、日本の私立大学に通う妹と同じくらいの仕送りで生活しても、海外旅行に行けるほどお金が余ったと言います。
大学の教育水準も決して低くありません。2022年発表のQS世界大学ランキングでは、アジアの大学トップ10にマラヤ大学(世界順位66位)、マレーシア化学大学(世界順位136位)がランクイン。ちなみに日本でランクインしたのは、東京大学、京都大学のみです。さらにオーストラリアやイギリスの大学の分校や連携校もあるため、そこで学位を取得すると、物価の安いマレーシアで学びながらも、提携校からの履修証明を入手することができます。世界に活躍の場を広げたい人にとって、非常に魅力的でしょう。
施設も整っています。昨年夏にマレーシアを訪れ、Sunway大学と Monash大学を見てきましたが、ネットやPC環境の完備はもちろん、日本の私立大学と遜色ない綺麗さです。Sunway大学の方はまるで商業施設のようでした。構内にエスカレーターがあり、功績を上げているOB、OGのポスターが至る所に飾られています。
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