世界的な野球イベントであるWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)は、日本国内でも高い注目を集めた。そうした中、今年の大会ではNetflixが日本国内における試合映像を独占したことから、そうした配信が視聴の在り方やメディアの役割にどのような影響を与えるのかが論議されている。
従来は地上波や無料配信で広く視聴されてきた経緯があるだけに、有料プラットフォームへの集中は人々が視聴する機会に偏りを生む可能性がある。また、契約の有無によって情報格差が生じる点も指摘されている。スポーツ中継のインターネット配信化の意味や改善策を検討するとともに、Netflixの独占配信をどう評価するか考えていく。
まず、スポーツ中継のインターネット配信化についてである。筆者はスポーツ中継の主流がテレビからインターネット配信へ移行している現状を肯定的に捉えており、その流れは重要であると考える。その理由は2つあり、まず場所・時間を問わず観ることができる利点である。外出中でもリアルタイムでなくても、手軽に観戦することができる。これによりスポーツへの関心を高め、維持しやすい。2つ目は、複数のコンテンツを楽しむことができることだ。テレビ中継とは異なり、選手データを表示したり、観たい画角のカメラを選択したりできるため、ファンの観戦の質は向上するだろう。
ではスポーツ中継のインターネット配信化に改善点はないのだろうか。様々なスポーツをより多くの人に観てもらい、それぞれの興行を盛り上げるためには、47都道府県どこに住んでいても好きなスポーツをテレビなどで無料で観戦できる環境は確保すべきではないか。具体的には、主要なテレビ局が協力して新しいチャンネルを一つ開設し、そこで様々なスポーツを中継するというものだ。これからも特定のテレビ局や配信サイトが独占的に中継するケースはあろうが、その際も通年ですべての試合を独占するのではなく、数試合でも合同で運営するチャンネルで中継すれば、そのスポーツの認知度をさらに広げられる。
では、今回のNetflixによる独占配信はどう考えたらいいだろうか。一定の利点がある一方で、課題も大きかったと考える。高品質な映像や多様な視聴機能を提供できる点は評価できるものの、有料契約者に限定されたことで、前回までのように多くの人が気軽に観戦することができなくなった。特にWBCのような国民的関心の高い大会においては、国民が等しく情報に触れられる「ユニバーサルアクセス権」にも配慮をすることが必要であり、誰もがアクセスできる環境を一定程度確保することが求められる。
通常の画質の無料放送と高画質でさまざまなサービスが加わった高品質の有料放送との併用など柔軟な形態が配信サービス側には求められるだろう。
参考記事:
・2026年4月2日付 朝日新聞(夕刊)(東京) 7面 「WBC独占配信「誰でも視聴」論点整理から」
・2026年4月6日付 朝日新聞(夕刊)(東京) 3面 「国民的関心事 無料で見たい?」
・2026年3月4日付 日経電子版 「地上波なきWBCは熱狂生むか Netflix独占、配信定着の試金石に」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODH221SB0S6A220C2000000/