18歳選挙権導入から10年 主権者教育の現在とは

2016年に選挙権年齢が18歳に引き下げられてから、今年で10年になります。先日の衆院選で、10代の投票率は43.11%でした。全体の投票率56.26%より13ポイント低くなっています。今回の選挙は大雪だけでなく、受験シーズンとも重なっていたという事情がありますが、これまでも若年層の選挙参加は低調です。

低投票率の対策として、総務省は「特に若年層への選挙啓発や主権者教育に取り組むとともに、関係機関等と緊密な連携を図り、投票率の向上に努める」としており、主権者教育を重要視しています。筆者は卒業論文でシティズンシップ教育を取り上げました。主権者教育はシティズンシップ教育の一部とされ、「市民と政治の関わり」を教えることとされています。

主権者教育の一例として、模擬選挙や模擬議会、選挙管理委員会による出前授業、マニフェスト比較学習、政策作り学習などが挙げられます。教材としては、高校生向けの副教材「私たちが拓く日本の未来」が作成され、全国の高校に配布されています。また2022年度より、高校の教科「公民」の中の必修科目として「公共」が新設されました。

文部科学省の調査によれば、2022年度の高校3年生に対して主権者教育を実施した(する予定)の学校は94.9%でした。日本の大半の高校で、主権者教育が実施されていることが分かります。内容としては、76.1%の高校で「公職選挙法や選挙の具体的な仕組みの理解を深める学習活動」が行われていました。また、「模擬選挙、模擬請願、模擬議会といった実践的な学習活動」に取り組んだ学校も38.2%を占めます。一方で、「現実の政治的事象についての話し合いや意見交換、議論」に取り組んだ高校の割合は29.3%でした(第1学年における調査)。「争点を知る」ことは政治的リテラシーを高めるうえで欠かせないとされますが、実際に起こっている論争的な問題を題材にして議論したり、話し合ったりする機会はまだまだ少ないことが分かります。

一方で、学校では政治的中立性が求められます。主権者教育における論争的な問題での授業実践については、地方議会で批判されたケースもありました。また、自民党内で「政治的中立」に逸脱した場合は罰則を科すよう法改正を促すという内容の提言が出されたこともあり、現場では主張が対立するような問題を回避する傾向があるそうです。

政治的中立の確保のために、どんなところを留意すべきでしょうか。高校生向け教材の指導資料では「他の考え方や見方を紹介したり、異なる見解を示した複数の資料を使用したりする」「教員の個人的な主義主張を避けて中立かつ公正な立場で指導するよう留意しなければならない」「取り上げる事象について異なる見解を持つ新聞が見られる場合には、異なる見解を持つ複数紙を使用することが望まれます」などと述べられています。

日経新聞の記事では、生徒同士が政治的なテーマを議論する機会を設けた高校の例が紹介されています。この学校では、中立性に配慮し、それぞれの意見に同じ分量の資料を用意したり、政党名を隠した上で各党が掲げる政策について意見を交わしたりしたといいます。

2025年12月14日時点。朝日新聞クロスサーチ、ヨミダスより筆者作成

主権者教育に関する報道は10年前の18歳選挙権開始の前後に急増したものの、現在は少なくなっています。主権者教育に関する議論をさらに深めるには、新聞を含めたメディアが学校現場での実践を報じ、多くの人に問題提起を行うことが必要となるでしょう。

SNSが隆盛となるなかで、若者の政治に対する態度はどのように変わっていくでしょうか。主権者教育がより充実することで、若者が広く政治に興味を持ち、正しい情報にアクセスする方法を知る未来を望みます。これからも主権者教育に関する報道に注目していきます。

 

参考記事

2月10日付 日経電子版「18・19歳投票率は43% 衆院選、全体を13ポイント下回る」

1月26日付 日経電子版「18歳選挙権10年目の衆院選 伸び悩む投票率、学校は「自分ごと化」模索」

2月7日付 読売新聞デジタル「[衆院選2026]受験生も1票託して 18歳選挙権10年 「忙しさ」配慮 大学生が「政策サイト」」

2015年9月30日付日経電子版 「18歳選挙権、高校手探り 政治的中立どう確保」

2015年7月9日付 朝日新聞 「政治的中立」逸脱したら――「教員に罰則」自民提言 18歳選挙権念頭」

 

参考資料

総務省「国政選挙における年代別投票率について」

総務省『私たちが拓く日本の未来』

総務省『私たちが拓く日本の未来 活用のための指導資料』

文部科学省『令和4年度 主権者教育(政治的教養の教育)実施状況調査 調査報告書』

 

唐木清志・岡田泰孝・杉浦真理・川中大輔『シティズンシップ教育で創る学校の未来』(東洋館出版社、2015年)

北山夕華・古田雄一・川口広美・斉藤仁一朗・川中大輔〔編〕『民主的社会をつくるシティズンシップ教育 理論と実践の現在』(ナカニシヤ出版、2025年)