切りやすい支持層 切れない投票先 中道改革連合

高市首相周辺が衆院解散を検討している―10日の読売新聞朝刊が撃ち抜いた特報は、他メディアのみならず永田町にも衝撃を与えた。幹事長にも伝えられなかったという根回し不足もさることながら、戦後では60年ぶりの1月解散といった特異なケースとしても注目を集めた。そんな中で、立憲民主党と公明党の合流が衆院で実現した。中道改革連合として出発した新党は、大きく政策の軸を転換したことから「選挙対策だ」などとしばしば批判される。今回はその中道改革に焦点を当てて、選挙後の展望をしていきたい。

各党の反応はどうか。新聞を読むと、冷ややかな受け止めが目に付く。自民の鈴木幹事長、維新の馬場前代表、国民の玉木代表は揃って「選挙対策」と批判した。かつて立民などと選挙協力をした共産の志位氏も「注視したい」と述べるに留めたという。

公約の比較

では本当に選挙対策だけなのか。ここからは昨夏の参院選で両党が掲げた公約を見ながら、共通する政策とそうでないものに分類したい。特に憲法・安全保障・原発についてみていく。

中道~左派を支持層に持つ両党は政策の親和性がもともと高かった。特にSDGs、ジェンダー平等、選択的夫婦別姓、核廃絶、そして政治資金の規制の方向でも一致している。

ただし、党の理念に関わる部分で温度差が見られる。その一つが原発の扱いだ。公明は長らく与党として再稼働を容認する姿勢を見せてきたが、立民は綱領で原発ゼロを目指すと定めていた。実際に昨年の立民の政策を見ると、原発部分について「新設・増設は行わず、全ての原子力発電所の速やかな停止と廃炉決定を目指します」としている。その一方で「実効性のある避難計画の策定、地元合意がないままの原子力発電所の再稼働は認めません」とし、合意や計画の策定が十分な場合には再稼働を容認する余地を残すなど、野田氏が代表に就いた頃を境に融和的な路線も示している。

憲法・安全保障問題では、自衛隊の9条への明記や集団的自衛権の行使が争点となる。限定的な集団的自衛権を認める公明に対して、立民は専守防衛に徹するべきだと反対の立場を取ってきた。また、憲法のあり方についても公明側が「加憲」をベースに議論を進めていることに対して、立民は9条加憲に反対するなど溝は深い。その一方で、防衛力の強化や日米同盟の深化といった点では両者は共通している。

これらの対立がある中、新党では原発については安全性や地元の同意を得たうえでの再稼働容認で折り合いが付き、安保・憲法問題では「存立危機事態における自国防衛のための自衛権行使は合憲」として、かなり公明側に歩み寄る展開となった。

支持層の動きを予想

党の要ともいえる安保分野で立民が譲歩したかたちだが、支持者はどう動くだろうか。まずは立民に代わるリベラル左派の受け皿となる政党という観点から見ていく。リベラル勢力とされる国政政党は立民・公明以外に社民党・共産党・れいわ新選組が挙げられる。ただし、これら三党はいずれも急進的な政策を掲げることも少なくない。「空想的平和主義」と揶揄されることもある理念と、現実的な平和主義の間にあった立民や公明の支持者が、いきなり他のリベラル勢力に投票するとは考えにくい。

右派では多くのライバル政党があるのに比して、左派には少ないというのが追い風となっている。では、無党派層の取り込みという観点ではどうか。しっかりとした「固定客」、すなわち創価学会票を持つ公明が加わったが、宗教色が極めて強いことから無党派層から敬遠される懸念がある。

政権批判票という観点では自民党と高市内閣への支持率の乖離が指摘されるが、この層にアプローチをかけているのは参政だ。もちろん、右派色の強い高市政権への揺り戻しという意味では最大野党である中道改革にはある程度の票が見込めるが、若年層からの支持が低いという欠点を抱えてきた立民、公明がどのようにして支持を広げるかが問われる。同時に、昨年の参院選の反省を生かし、政権批判票をいかに取りこぼさないかも重要だろう。

立ち向かうべき課題

新党はこれから様々な壁に立ち向かうこととなる。まずは世間の期待値の低さだ。読売新聞の世論調査では、中道に「期待する」と答えた割合は22%と「期待しない」の69%を大きく下回った。また、政治とカネを追及する立場の両党が衆院では中道改革として、参院では元の党として、それぞれ政党交付金を受け取れるという点も制度の悪用と言われかねない。参院側でも合流があるのかについて明確に党の将来像を示す必要がある。

選挙においての懸念点もある。立民と国民の間で按分されていた比例の「民主党」票が今回得られないことだ。これまで選挙のたびに300〜400万票投じられた「民主党」票を失えば、単純計算で150〜200万票近くを失うこととなり、議席を減らす、あるいは増やせない一因になりかねない。

地方に目を向けると、自公は変わらず議会運営において協力を続けている。国政と地方の「ねじれ」も気がかりな点だ。かつて互いの組織に手ひどくやられた支持者や候補は今回の協力をすんなり受け入れられるのだろうか。前途多難な船出である。

 

参考

立憲民主党参院選アーカイブ

https://cdp-japan.jp/archive/election2025/

公明党2025参院選 重点政策

https://www.komei.or.jp/content/manifesto2025_02/

 

読売新聞

2026.1.20(火)朝刊二面 中道政策 立民、公明主張に譲歩 改憲是非 温度差も

2026.1.17(土)朝刊政治面 新党結成 効果疑問視 中道改革連合 自民「左寄りの中道」