笑顔溢れるクリスマスマーケット 政治的利用の過去

 12月に入り、日本はもちろん世界各地がクリスマスムードに包まれています。この季節になると、街はイルミネーションやツリー、クリスマスマーケットで彩られ、いつもより多くの人で賑わいます。 

昼から多くの人で賑わうクリスマスマーケット(北九州市小倉にて筆者撮影)

 日本における経済効果が約6700億円ともいわれるクリスマス、2年前に訪れた欧州ではそれ以上の盛り上がりを見せていました。筆者が足を運んだフランスとアイルランドのクリスマスマーケットではメリーゴーランドやスケート場、観覧車などが臨時でオープンし、来場者も比較的家族層が多かった印象でした。フランス人の友人が招待してくれたクリスマスパーティーには親戚一同が集まり、日本でいう年末、正月の印象が強いものでした。 

フランスのクリスマスマーケット(フランスのラ・ロシェルにて筆者撮影)

アイルランドのクリスマスマーケット(アイルランドのダブリンにて筆者撮影)

 世界各地のクリスマスマーケットで沢山の笑顔が溢れていますが、過去には政治的に利用された暗い過去もありました。クリスマスマーケットはドイツ発祥であることは比較的有名ですが、一時、資本家たちが望んだ商売の競争排除などを理由に追いやられていたクリスマスマーケットを再興させたのはナチス政権だったといいます。 

 ナチス政権はクリスマスまでの日数を数えるアドベントカレンダーに党のプロパガンダを入れたり、讃美歌をキリスト教色の無いものに書き換えたりしています。さらにマーケット初日の開会式に現れる天使のような姿をした「クリストキント(幼子キリスト)」というマスコットには決まって地元に住む金髪碧眼の少女が選ばれていたそうです。屋台での取り決めも多く、伝統の再興というより政治色が強く、ナチスに利用された印象が大きいです。 

 極右政権に利用された過去もあるクリスマスマーケット。2019年に先ほど述べたクリスキント役に初めて2つの人種的背景を持つ少女が選ばれると、極右の政治家がこれに反対して人種差別的発言をする騒動もあったようです。発祥の地ということもあり、クリスマスマーケットの歴史と伝統が複雑で行事の開会式の演出の一部までもが政界へ影響を及ぼすことに驚きました。 

 そんな暗い過去を持つクリスマスマーケットだけでなく、マーケットとともにクリスマスの夜を彩るイルミネーションもドイツが発祥です。ツリーに飾りを付けるアイデアを思い付いたのはドイツの宗教改革者ルターだそうです。 

 ハロウィーンが終わるとすぐにクリスマスムードへと衣替えをする街にいつも気が早いと感じつつも、2025年も1か月を切りました。街に溢れるクリスマスムードの中に歴史や伝統を見つけてみてはいかがでしょうか。 

 

参考資料:

プルーヴ株式会社 海外クリスマス市場。各国のクリスマスの経済効果と過ごし方の紹介

ナショナル ジオグラフィック日本版サイトドイツ発祥でナチスが再興、クリスマスマーケットの驚きの黒歴史