同性婚否定は「合憲」? 子どもを産み育てることが法律婚の目的なのか

東京高裁で11月28日、同性婚を認めないのは憲法に違反するなどとして、性的マイノリティの8人が国に損害賠償を求めた訴訟に対する判決が言い渡されました。同裁判所は「合憲」と判断し、原告側の控訴を棄却しました。

全国5地裁に6件起こされた同性婚をめぐる集団訴訟は、控訴審判決が出揃いました。これまで示された高裁判決はいずれも「違憲」で、判断が割れる結果となりました。

 

◾︎判決要旨

(11月30日 筆者作成、赤字は筆者による)

 

・14条

民法は法律婚について「夫婦とその子」を基本的な家族の姿として想定しており、異性間でのみ法律婚をできるという区別は合理的な根拠に基づいている。扶養義務や相続などは契約で代替でき、人口比で約93%の自治体がパートナーシップ制度を導入している現状を鑑みると、同性間の結合関係自体は侵害されていない。以上のことから、同性婚が認められていないことは「法の下の平等」を定める憲法14条に違反するとは言えない。

・24条

憲法改正時の社会状況などを総合すれば、24条は異性間の永続的な精神的、肉体的結合を目的とした結合関係を「婚姻」と定めたと解される。同性同士の事実婚は憲法改正後に社会的承認を受けたのであり、同性同士の結合関係は24条の「婚姻」に含まれない。したがって、同性同士が憲法上の「婚姻」の自由を保障されているとはいえず、「個人の尊厳と両性の本質的平等」に基づく憲法24条2項にも反しない。

 

◾︎他控訴審判決との違い

6件の控訴審判決のうち、「違憲」判決は本判決のみです。

(12月1日 筆者作成)

24年12月の福岡高裁判決は幸福追求権を認めている13条にも言及し、「結婚相手として同性を選択する者の幸福追求権を侵害する現行法は13条に違反する」としました。25年3月の大阪高裁判決は「法律婚以外の制度を設けても不合理な差別は根本的に解消しない」と踏み込んで指摘しました。

 

◾︎性的マイノリティの生きやすい社会へと変化しているのか

東京高裁は、パートナーシップ制度の拡充や契約での代替などを理由に、同性間の結合関係自体は侵害されていないとしました。しかし、本当にそう言えるのでしょうか。

そもそも、パートナーシップ制度は各自治体の条例に基づく制度です。双方又はいずれか一方が性的マイノリティのカップルが、自治体にパートナーシップの宣誓をします。宣誓を踏まえて証明書や登録証が交付され、行政サービスを受けることが可能になります。サービスの例として、公営住宅の入居申込や指定する医療機関での病状説明・治療方針の同意、勤務先の福利厚生の利用などができるようになります。一方で、社会保障や税制上の優遇措置が受けられないなどの制約も残ります。法律婚と同様のサービスを受けられるわけではありません。

パートナーシップ制度を導入する自治体は、確かに増加しています。判決文でも言及されるように、人口比で約93%の自治体が本制度を導入しました。しかしながら、法律婚と完全に同様のサービスを受けられるわけではありません。同性同士の婚姻を認めれば、例外的な制度を新設することなく彼らの権利を保障できます。

 

◾︎法律婚は子どもを産み育てるための制度なのか

そもそも法律婚とは、子どもを産み育てるための制度なのでしょうか。現行法において、子どもを持たない選択をする異性カップルは少なくありません。子どもを望んでいながら、妊娠できない事情があるカップルもいます。反対に、子どもを養育する同性カップルも存在します。

法律婚は確かに親子関係を確立させる役割を担っていますが、あくまでも機能の一つでしかありません。「生まれてくる子の父母としてどうあるべきかという観点から具体的な婚姻の要件及び効果を定めることには、現在でも合理性が認められ(る)」などと述べる本判決は、様々な生き方が見出されている今の時代を反映していないのではないでしょうか。

 

◾︎国の裁量権を認める前に

高市早苗首相は、「同性婚反対」を明言しています。このため同性婚を含む法制度について、国会においては審議が開始されないという状況です。立法機関が同性婚の法制化に議論を進めないから、現状を打破する手段が他にないから、原告らは司法機関の判断を求めているのです。人権を守る「最後の砦」であるはずの司法が、議論を国会に丸投げしてよいはずがありません。

最高裁は、早ければ来年にも統一判断を示す可能性があります。同性婚法制化の実現に弾みがつく最高裁判決が下されることを望みます。

 

参考記事:

・11月30日付 朝日新聞(西部) 朝刊28面 「同性婚 問われる政治」

・11月29日付 朝日新聞(西部) 朝刊27面 「同性婚排除 唯一の『合憲』」

・11月29日付 読売新聞(西部) 朝刊26面 「同性婚否定『合憲』判決」

・11月28日付 日経電子版 「同性婚訴訟、高裁で初の『合憲』判断 東京高裁判決 専門家の見方は」

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUD276TT0X21C25A1000000/

・11月5日付 朝日新聞デジタル 「宣誓して安らぎ、願うのは同性婚 パートナーシップ制度、導入10年」

https://digital.asahi.com/articles/DA3S16337695.html

 

・11月29日付 西日本新聞 朝刊23面 「同性婚訴訟 二審初の合憲」

・11月28日付 BBC「Japan’s same-sex marriage ban is constitutional, says Tokyo court」

https://www.bbc.com/news/articles/clyz7njqwvvo

 

参考文献:

・call4 判決要旨

https://www.call4.jp/search.php?type=material&run=true&items_id_PAL%5B%5D=match+comp&items_id=I0000031

https://www.call4.jp/file/pdf/202511/ab3e207e4d0a421b1ae2d44313218d04.pdf

・福岡県 「福岡県パートナーシップ宣誓制度について」

https://www.pref.fukuoka.lg.jp/contents/fukuokapartnership.html

・朝日新聞GLOBE+ 「【解説】パートナーシップ制度とは?同性婚との違い、違憲判断が相次ぐ裁判の状況は?」

https://globe.asahi.com/article/15624285