葬儀で感じる 社会の変化

先日、筆者は祖父の葬儀に参列し、古くから続く風習の中にも社会の変化を感じました。少子高齢化による高齢者への配慮、人手不足、多死社会が変えた葬儀の形を見つめていきます。

幼い頃に葬儀で訪れたお寺では、年齢に関わらず誰もが座布団に正座をしていました。しかし、今回は足腰の悪い高齢者への配慮もあり、全員が椅子に着席する形でした。小さな変化ではありますが、高齢化かつ社会の配慮の広がりを感じました。

また、お葬式を終えて1時間後、祖父の名前が書かれていた入口の看板を見ると既に違う方の名前に変わっていました。人の死の身近さを感じさせられたと共に、多死社会への危機感も感じました。

実際に、高齢化で死亡者数が増える中、少子化による担い手不足という課題もあり、葬儀の遅れが出始めているようです。日本経済新聞によると

「国内の年間死亡者数がピークに達する2040年ごろには都市部の『火葬待ち』は2週間超が当たり前になりかねない」

と言われています。

そういったなかで、遺体に防腐措置を施して衛生的に保全する「エンバーミング」を利用する人が増えているようです。遺体を最大50日間保全でき、火葬待ちのみならず、ゆっくり故人とお別れをしたいという理由で利用する人もいるようです。

社会課題が浮き彫りになる一方、故人や遺族への配慮も広がりつつあります。日本は世界的にも平均寿命が高いことは事実ですが、平均寿命と健康寿命には10年程度の差があるそうです。病気療養などで故人や遺族がしたくてもできなかった帰省や旅行を叶える旅行葬というサービスがあります。ひつぎと親族を乗せた霊柩車が思い出の地を巡るといったもので、故人と過ごす最後の時間に少しでも笑顔が増える、良い取組みだと思いました。

遺族の意向にしっかりと寄り添い、心残りのない時間とするために、社会課題に向き合いながらも、葬儀の形は多様化していくことでしょう。

 

 

参考記事:

日経新聞電子版: 2025年9月30日付 遺体をきれいに保つエンバーミング、10年で2.6倍 火葬待ち深刻化で

日経新聞電子版:2025年10月25日付 ゆかりの地へ「旅行葬」、霊きゅう車で故人と思い出巡り

日経新聞電子版: 2025年11月2日付「火葬待ち」2週間、20年後は当たり前? 弔いインフラ担い手不足