約8100万人が保有している国家資格、「運転免許」。資格を持ち続けるには「更新手続き」が欠かせません。運転免許を取得してから3年ほど経った筆者は、先日、東京都の運転免許センターで初回更新の手続きをしました。
都では24年2月から、警視庁による運転免許の更新がオンラインや電話による予約制に変更されました。また25年3月からはマイナンバーカードに運転免許証の情報を入れて一体化する手続きが始まり、「マイナ免許証」を持っていれば更新時の講習をオンラインで受講できるようになりました。
実際に筆者も、自宅に届いたはがきに書かれた「予約用ID」をサイトに入力して、予約をとりました。その際は、マイナンバーカードと運転免許証を一体化したうえで、運転免許証も引き続き保有することができる「2枚持ち」の手続きを申し込みました。
初回更新者講習は違反運転者講習と同時に、2時間行われます。講師の方が繰り返し話したのは、「ハイビーム」を積極的に活用することでした。
交通事故は夕暮れ時や夜間に多く発生しています。全国で使用されているという交通教本には「自動車を運転するときは、前照灯を早めに点灯するとともに、暗い道で対向車や先行者がいない場合は、前照灯を上向き(ハイビーム)にすることで歩行者や自転車などを遠くから発見することができ、早期の事故回避措置が可能となります」と記載されていました。
もちろん、ハイビームは他の車両等を幻惑させるおそれがあるため、対向車と行き違うときや、ほかの車の直後を走るときは、前照灯を減光するか下向き(ロービーム)に切り替える必要があります。
しかし前照灯の照射距離は、ロービームで約40メートルのところ、ハイビームでは2倍以上の約100メートル先を照らすことができます。講師は講習で、「これから年末が近づくとお酒を飲む機会が増える。路上で寝込む人に気付かず、加害者にならないためにも、ハイビームを積極的に使用してください」と呼びかけていました。
路上寝込みによる事故の致死率は極めて高いといわれています。警視庁交通総務課によると、23年に都内で飲酒後に路上に寝込んで起きた事故の致死率は32%でした。歩行者の事故全体では1%にとどまり、大きな差があります。
タクシー業界も対策を進めており、全国ハイヤー・タクシー連合会(全タク連、東京・千代田)は昨年、年末年始を控えた時期に傘下協会の加盟社に対して、早い時間帯からのヘッドライトの点灯やハイビームの活用を促しました。
ただ、ハイビームとロービームの頻繁な切り替え操作の煩わしさやロービームからの切り替え忘れといった問題も懸念されます。このような実態を解消するため、メーカーは、ヘッドライトに関するさまざまな技術開発を行っています。
一般社団法人日本自動車連盟によると、最近では、前方の状況に応じて自動的にハイビームとロービームを切り替え、夜間の視界を最大限に確保する「オートハイビーム(自動切換型前照灯)」が普及し始めています。しかし、歩行者や自転車に対してはハイビームからロービームに切り替わらないことがあり、状況に応じて手動で切り替える必要があります。
交通ルールも、講習の在り方も、車そのものの性能も、日々変化を遂げています。交通事故は、ひとりひとりがルールを守ることで減らすことができます。安全な暮らしを守るために、免許更新は欠かせないと感じました。
参考資料
朝日新聞デジタル「運転免許更新は予約でスイスイ サイトか電話で、東京で2月スタート」
朝日新聞デジタル「マイナ免許証、更新にご注意 カード変わる時、再手続き必要」
日経電子版「「路上寝込み」で事故死、全国で年100人 7割は飲酒後」
一般社団法人日本自動車連盟「[Q]夜間走行時のヘッドライトはハイビームが基本?」
警視庁「運転免許更新手続の完全予約制について」
警視庁「運転免許試験場での更新手続」
警視庁「運転免許統計」