「うざい」広告 増えるサブスク

11月1日、お笑いコンビ「ダウンタウン」のコンテンツに特化した有料動画配信サービス「DOWNTOWN+(ダウンタウンプラス)」の配信が開始されました。今年6月には長寿番組「ダウンタウンDX」が、そして年内をもって「酒のつまみになる話」が終了するなど、地上波テレビで長年愛されてきた番組が幕を下ろします。相次ぐテレビ番組の終了はテレビ業界全体が大きな転換期を迎えていることを示すものではないでしょうか。

それと同時に、動画配信プラットフォームでの番組の成長は著しく進んでいます。「ダウンタウンプラス」も、NetflixやAmazonプライムビデオと同様に、月額や年額を支払って視聴する権利を得るサブスクリプション(サブスク)形式を採用しています。

サブスクサービスでは、様々なプランが提供されています。例えば、Netflixには3つのプランがあり、グレードアップするにつれて広告が無くなったり、画質が向上したりします。一方、Amazonプライムビデオは、今年4月から番組の途中に広告が表示されるようになりました。長編映画の途中でも広告が挟まれるため、利用者にとっては非常に不便なものとなっています。実際にGoogleで「Amazonプライムビデオ 広告」と検索すると、それに続くのは「うざい」や「なぜ」など、多くの批判的なコメントです。定額料金を支払って「広告なし」を享受してきたユーザーにとって、料金を据え置いたまま広告が追加されることへの不満は大きなものです。

バラエティ番組での広告は納得できますが、長編映画の終盤で1分程度のCMが挟まれるとテンポが崩されてしまい作品にも大きな影響が出てしまします。現在、Amazonプライムビデオは月額600円の通常会費に加え、月額390円で広告フリーオプションに加入できます。利益を追求するあまりサービスの質を下げてしまっては、比較的長い動画を観る横画面の映像が見られなくなり、「YouTube shorts」や「Tik Tok」などの1分程度の短い立画面動画へと消費者が流れてしまうのではないでしょうか。

これに限らず、サブスクが身近な存在になったことは、視聴者にとって必ずしも良いことばかりではない側面もあります。特にスポーツの配信は、「サブスク限定の独占配信」が増え、私たちが月々の契約をしないと見られない事態が実際に起こっています。

来年2026年3月に行われるワールドベースボールクラシック(WBC)の日本国内における全試合の放送・配信権をNetflixが独占配信すると発表されました。前回大会では地上波で日本戦が生中継され、国民的な熱狂を巻き起こしましたが、今回はNetflixに加入していなければ全試合のライブ視聴はできません。本日の朝日新聞朝刊2面でも指摘されているように、ネット配信においてスポーツは新規顧客獲得の大きなきっかけとなります。このため、AmazonやNetflixなどの配信権利競争が激化し、権利料が高騰しています。これに対し、国民の視聴権を保護する動きも存在します。例えば、イギリスでは「ユニバーサルアクセス権」が認められており、国民の関心が高い主要なスポーツイベントは無料放送が義務付けられるほどです。  

以前の記事でも述べましたが、スポーツは「観戦を体験すること」にも楽しさがあると思います。サブスク限定にしてしまうと、観るのはある程度スポーツに関心がある人たちだけに限られるでしょう。スポーツは立派な文化であり、国ごとに様々特色があります。限られた人ではなく、できるだけ多くの人たちにスポーツ観戦を楽しんでもらう環境を整えてほしいものです。

これまでサブスクはバラエティやスポーツ中継などでテレビの常識を覆し、今後もこの流れは続くと予想されます。視聴者は、より多様なコンテンツを選べるようになった一方で、どのサブスクにお金を使うのかという選択がこれまで以上に重要になっています。

参考
9日付け 朝日新聞朝刊 『WBC中継「独占有料配信」の波紋』
9日付け 朝日新聞朝刊 『スポーツの中継、どんな権利が必要か』