先月30日、国内最大の自動車展示会「ジャパンモビリティショー」(JMS)が東京ビッグサイトで開幕しました。「東京モーターショー」から名称を改め、2回目の開催となります。
筆者はあらたにすの記者として、前回23年と同様、一般公開に先立って行われたプレスデー(報道公開)に参加してきました。
現地での取材を踏まえ、モビリティの未来を考える「〈特集〉JMS2025」。第1回は2年前との比較からモビリティショーを読み解きます。
◯「未来」から「近未来」へ?
今回は、全体的により現実的で実現可能性の高い展示が多かったように感じました。
前回が遥か先の「未来」のモビリティ社会を提示していたとすれば、今回は数年後には実現していそうな「近未来」の移動を描いたと言えるのではないでしょうか。
未来の東京を舞台に映像や展示で次世代のモビリティを体験する「Tokyo Future Tour」は、今回は「Tokyo Future Tour 2035」として舞台を10年後の社会に設定しました。前回は大型スクリーンに映されたSF映画のような未来都市の映像や大型の四足歩行ロボが目を引きましたが、今回は姿を消し、より実用化に近い技術の展示に重点が置かれている印象を受けました。
各メーカーのコンセプトカーもより現実的なものが中心になっていました。
スバルは前回、未来の空の移動手段として「AIR MOBILITY Concept」を発表し大きな話題を呼びましたが、今回はモータスポーツとアウトドアというスバルファン(スバリスト)のニーズに応える車が中心となっていました。
前回、近未来的なデザインのEVコンセプトカーを5台発表した日産自動車は、今回はコンセプトカーを発表しませんでした。新型「エルグランド」など今後投入予定のモデルを中心に据え、「売れる車がない」とまで言われる現状の打破を目指す姿勢が窺えました。
◯自動車中心に回帰
自動車以外の多様な移動手段を包摂する祭典への生まれ変わりを目指し、「モーターショー」から名称を変更したJMSですが、今回は自動車中心の展示に回帰している印象を受けました。
前回注目を集めた四足歩行ロボや操作可能な巨大ロボといったモビリティは見られず、23年には実車で展示されていたJR東日本の水素ハイブリッド電車「HYBARI」も模型のみの展示となっていました。
また、「Mobility Culture〜タイムスリップ・ガレージ〜」という展示企画が設けられ、1980年代の大ヒット映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」に登場した米国車「デロリアン」やトヨタ「カローラ レビン」、マツダ「RX-7」など往年の名車が並べられるなど、長年の自動車ファンを意識した展示も見られました。
こうした背景には、未来志向を前面に押し出した前回モビリティショーへの自動車ファンからの不満の声があったといいます。
JMSを主催する日本自動車工業会の片山正則会長(いすゞ自動車会長)は、公式SNSのインタビューで「昔からクルマを見るのをすごく楽しみにしていた人からすると少しわかりにくいショーだった」と前回の反省を語っています。
前回から若干の軌道修正が見られた「JMS2025」。
若者の車離れが叫ばれて久しい中、長年のファンの期待にも応えつつ、いかに新しいファンを獲得していくか。その舵取りに日本の自動車業界の未来がかかっていると言っても過言ではないかもしれません。
参考記事:
10月31日付 朝日新聞朝刊6面(経済・総合)「往年の車好き向け 回帰 モビリティショー「未来型」見直し」
日経電子版「ジャパンモビリティショー開幕 自工会会長「未来の共創の場に」」(2025年10月30日)
日経電子版「日産、背水の新車攻勢 再建のカギは新型エルグランド」(2025年10月29日)
参考資料:
Japan Mobility Show 2025|ホームページ





