共感の連帯――パレスチナ反戦デモに集う声

2023年10月29日から毎週土曜日、京都市内で続けられている「イスラエルはジェノサイドをやめろ!京都デモ」は、25年10月11日にも行われました。

四条河原町で進行しているデモ(2025年10月11日 筆者撮影)

 朝日新聞によると、デモの参加者は毎回さまざまな旗をふり、プラカードを掲げており、性的少数者(LGBTQ)の象徴を想起させる七色の旗がはためくこともあるそうです。ただ、デモで掲げられている七色旗は、反戦運動の「平和の虹の旗」であり、性的少数者の「レインボーフラッグ」とは似ているけれど異なると主催団体は説明しています。

 

一方で、参加者からは「あの七色の旗がレインボーフラッグであったとしても、何が問題なのか」と問いかける声もあったといいます。パレスチナの問題と同時に、国内外で続く性的少数者への迫害や差別を可視化しようとする思いが、デモの場に交錯しているのです。彼らにとって、パレスチナへの連帯は遠い中東の問題ではなく、抑圧や排除に対抗する自らの闘いの延長線上にあるのだと思います。

 

パレスチナ反戦デモに性的少数者や障がい者など多様なマイノリティの思いが反映される現象は韓国でも見られます。24年2月、ソウルでの反戦デモで壇上に立って演説をしたのは女性の障がい者でした。彼女は「パレスチナに連帯を」と訴え、ガザ地区で起きているジェノサイドの実態を語っていました。また、会場には労働組合や市民団体の旗も掲げられ、社会的不平等と国際的抑圧を結びつけて訴える場となっていました。

韓国ソウルのパレスチナ反戦デモ(2024年2月8日 筆者撮影)

 一方、京都府宇治市にあるウトロ地区の「ウトロ平和祈念館」では、24年12月からパレスチナの戦争の状況を伝える特別展が開かれていました。副館長の金秀煥(キム・スファン)さんは、「パレスチナも住んでいる土地を奪われてきた歴史を共有している点で、ウトロ地区の歴史と似ている」と語っていました。ウトロ地区は、戦時中に日本軍の軍需工場で働かされた朝鮮人労働者やその家族が戦後も住み続けてきた地域です。長年、土地の権利をめぐる訴訟や差別と闘ってきた歴史を持ちます。そのため、パレスチナの「土地を奪われる」現実に共感が生まれているのだと考えられます。

 

京都のデモではマイノリティに向けられた「迫害」や「差別」への抵抗として、ウトロ平和祈念館では「財産権」や「居住権」をめぐる闘いとして、それぞれがパレスチナへの連帯を示していました。単なる反戦運動ではなく、社会の中で声を上げにくい立場にある人々が、自らの存在を社会に示す場にもなっています。パレスチナの問題は「遠い国の戦争」ではなく、「構造的な差別や暴力が世界中に連なっている」ことを気づかせる鏡でもあるのです。

 

マイノリティに対するこれまでの抑圧の歴史が、パレスチナで起こっているジェノサイドへの共感を呼び起こし、多様な人々が参加するきっかけを作っているのだと思います。デモに参加する人々の旗や声には、それぞれの生きづらさの訴えとこれからの希望が込められています。平和を求める行動が他者の痛みへの想像力を広げ、社会に共感の連鎖を生み出していくことこそ、こうしたデモの大きな意義なのではないでしょうか。