先日、映画『鬼滅の刃 無限城編』が日本を含む全世界で日本映画の歴代興行収入1位を達成したというニュースを目にしました。日本国内での大ヒットは耳にしていましたが、世界という舞台でここまで支持を集めることは、やはり驚くべきことだと思います。同じく音楽の分野でも、アニメ『チェンソーマン』の主題歌である米津玄師氏の「KICK BACK」が日本語詞曲として初めて米レコード協会のプラチナ認定を受けるなど、近頃日本のコンテンツが海外で快挙を重ねています。
“anime”や関連文化が世界的に広がっているのは、もはや一過性の現象ではなく、確かな潮流になっていると言えるでしょう。
私は普段からアニメをよく視聴しているのですが、SNS上で推しの作品やキャラクターに関する投稿を眺めていると、外国人のファンが驚くほど多いことが分かります。
いまさらの話ではありますが、日本のアニメは1980年代から欧米やアジア各地に輸出され、熱狂的な支持を得てきました。たとえば『ドラゴンボール』や『セーラームーン』はすでに国境を越えて世代を超える定番となり、スタジオジブリ作品はアート性を評価されてアカデミー賞にも輝きました。
これまでは、アニメは一部の熱心なファンに支えられてきた面が強かったように思います。ところが近年は、海外でも一般層へと広がり、家族や友人と気軽に楽しめる「大衆文化」としての存在感を高めているのではないでしょうか。
この背景にはいくつかの要因があると考えられます。
第一に、配信プラットフォームの普及です。NetflixやCrunchyrollといったサービスの多言語対応により、かつては日本語や英語が分かる一部のファンしか見られなかった作品が誰でも楽しめるようになりました。経済産業省によれば、アニメ産業の海外市場は2023年に1.7兆円を超え、国内を上回る規模に拡大しているといいます。
第二に、作品の多様性です。『進撃の巨人』や『呪術廻戦』などの手に汗握るアクションやストーリーが魅力のアニメに加え、『すずめの戸締まり』などの映像美や社会性を備えた作品も登場しており、幅広い層を取り込んでいるのです。音楽市場との連動により、アニメは若者文化の一部になっているともいえます。
第三に、国際的なアニメイベントの存在です。米国で毎年開催され、第一回から20年以上にわたって開催されているアニメエキスポはファン同士の交流を増やし、世界的な認知度を高めています。
もっとも、課題もあります。
制作現場の過密な労働環境やクリエイターの待遇問題は、日本国内でもしばしば指摘されてきました。
世界で評価される一方で、現場を支える人材が疲弊しているという状況は、今後の持続的な発展の妨げになりかねません。今までの質を保ちつつ、国際的な需要に応えられる体制づくりが求められていると思います。
『鬼滅の刃』の記録的成功や米津玄師氏の快挙は、日本のアニメと関連文化が世界的に受け入れられていることを改めて物語っています。いまや日本のアニメは「サブカルチャー」ではなく、世界共通の娯楽・芸術として広まりつつあります。次の10年で、日本アニメがどのように進化し、世界に新たな驚きと感動を届けるのか。ファンの一人として、その歩みを楽しみに見守りたいです。
参考記事
2025年9月15日付 日本経済新聞 映画「鬼滅の刃」、北米の初週末収入100億円超 日本アニメで歴代首位
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