イタリアの北部に位置し、水の都として名高い街がベネチアです。先月、念願叶って訪れることができました。町に流れる運河をゴンドラが行き交う光景は、まるで絵画のようで、水の都と言われる所以がよく分かります。そんな魅力溢れるベネチアですが、一説では2100年に水没するかもしれないとされています。実際に訪れることで、光と影が交差する水の都の今を目の当たりにしました。
(ベネチアの街の光景、2026年1月23日筆者撮影)
ベネチアは歴史上、最も長く続いた共和国としても知られています。1000年以上にわたって存続し、長い歴史のなかで独自の文化を築いてきました。1987年には世界文化遺産に登録されています。世界でも数少ない文化遺産の基準6項目、全てを満たす遺産です。ベネチア共和国の栄華を伝える独自の文化、橋と運河による独自の都市空間など、評価基準を満たしました。
島内には、観光名所が多数あります。ナポレオンが「世界で最も美しい広場」と賞賛したサン・マルコ広場、大運河に架かるリアルト橋、共和国の中心となったドゥカーレ宮殿など様々です。運河に寄って隔てられた約118の小さな島々が連なるベネチア本島だけでなく、周囲には魅力溢れる離島も点在しています。
(サン・マルコ広場、2026年1月23日筆者撮影)
筆者は、ガラス職人の島と言われるムラーノ島にも足を運びました。また、ベネチアは税や罰金など、観光地としての制度が整備されている印象も受けました。観光客に事前に訪問日を申告してもらい日ごとの税の支払いを求める、運河での遊泳をはじめ迷惑行為には最高500ユーロの罰金を科すなど、オーバーツーリズムを避け、観光地の秩序維持につなげる狙いがうかがえます。島内は観光客で賑わっていましたが、たしかに過度に混雑している印象は受けませんでした。
(ムラーノ島で制作されたガラス細工、2026年1月24日筆者撮影)
観光中は、その美しさに夢見心地でした。ただ、島内の建物には水位が上昇した形跡が見受けられる場所もあり、ベネチアが置かれている状況にハッとさせられました。気候変動が深刻化するにつれ、ベネチアを襲う高潮の潮位は高くなりつつあります。現地で「アクアアルタ」と呼ぶ異常潮位の被害が拡大傾向にあるのです。2022年時点での統計では、過去100年間にベネチアを襲い大きな被害をもたらしたアクアアルタのうち、半数以上が2009年以降に起こっています。また、地盤沈下によってベネチアは年間約2ミリずつ沈んでおり、平均海水面は1900年以降で約30センチ上昇していることが分かっています。異常潮位、地盤沈下、水面上昇と、ベネチアが置かれている状況は深刻です。こうした状況から、モーゼと呼ばれる可動式の防波堤を活用するといった対策が練られています。2025年3月には、将来の計画を立てる国家機関も発足しました。
長い歴史を紡ぎ水の都として多くの人を魅了してきたベネチアは、水没の危機にあります。町の美しさに胸を打たれただけでなく、ベネチアを訪れたことで、気候変動の深刻さを改めて理解することができました。これまで積み上げた歴史以上の遠い未来にもベネチアが残ることを願って、今後の動きに関心を寄せます。
参考記事:
2022年9月8日付 日本経済新聞電子版「ベネチアの水没救うモーゼ計画 生物多様性は守れるか」
2025年12月11日付 日経速報ニュースアーカイブ「観光客は脅威か恩恵か 人気の欧州、強まる罰金・民泊規制-編集委員 下田敏」
2026年1月19日付 日本経済新聞朝刊「宿泊税に「定率制」台頭 ホテル料金上昇で増収、東京都は27年度導入へ(InsideOutいまを解き明かす)」
参考資料:
OnTrip JAL「人気のゴンドラ観光も!世界遺産・ヴェネツィアの歴史をめぐる旅」
CNN「沈みゆくベネチアに都市全体を持ち上げる計画 革新的なアイデアは浸水から街を守るか」
地球の歩き方「イタリア・ヴェネツィア(ヴェネチア、ベネチア)の観光ポイントと人気スポット」


