「あまおう」からみる 現代の課題と守りたいもの

スーパーに沢山のイチゴが並ぶ季節になりました。毎年、店頭を飾る福岡県産ブランド「あまおう」が1000円を切ると本格的なイチゴの旬の到来を感じます。

 

「あまおう」といえば、昨年の12月12日から首都圏への空輸が始まっています。陸路では店頭に並ぶまでに収穫から2日程度かかっていたものが1日に短縮でき、それだけ新鮮なあまおうが届けられるようになりました。空路での輸送は、物流の「2024年問題」の解決にも一役買っているようです。今後はアジアを中心とした海外市場も視野に入れ、販路拡大、ブランド力向上を図っています。

 

そんな福岡を代表するイチゴの生産者も多くの課題に頭を抱えています。「あまおう」が2005年「福岡S6号」として品種登録されてから20年間、昨年2025年1月19日までは生産を独占できる育成者権に守られていました。しかし、その期限が切れ、今では県外での栽培、持ち出しも法律で罰せられない状況にあるといいます。また、高齢化で生産農家数、市場への出荷量ともに減少傾向にあります。生産の安定に加え知的財産保護、ブランド力向上といくつもの課題に直面しているのです。

 

知的財産保護に関しては、商標登録が1つの解決策として挙げられます。育成者権の期限切れで苗の流出などの懸念があることから、「あまおう」は2002年に商標登録され、中国や香港などでも商標権を取ったと聞きます。JA全農ふくれんは、「あまおう」を県内でのみ生産することに誓約した生産者に限って苗の販売、商標使用を認めているといいます。

 

生産の安定については、収穫のしやすさを向上させるための設備の改善や高い技能を持つ人材の確保が求められます。立ち作業中心であることに加え、栽培スペースの増加も可能な「高設栽培システム」の導入、特定技能人材の力を借りた出荷作業など、イチゴに限りませんが、先端技術や外国人材の力を借りる動きが広がっていることが分かります。

 

高齢化、人手不足、生産量減少といった課題を抱えながらもオリジナリティや特許、伝統をどう守っていくのか。「あまおう」からは現代社会の断面が垣間見えます。

 

参考記事:

2023年3月8日付 日経電子版 「あまおう」迫る2025年問題 王座死守へ安川電機も動く

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOJC03AZX0T00C23A3000000/

2025年4月25日付 日経電子版 単価日本一のイチゴ「あまおう」生産減止めろ 福岡県が省力化に補助

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOJC109QR0Q5A410C2000000/

2025年5月23日付 日経電子版 特定技能28万人、地域産業支える 広島の造船は外国人を管理職に

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFC027WY0S5A500C2000000/

2025年1月22日付 読売新聞オンライン 「あまおう」生産独占の育成者権は切れたが、代わる「盾」は商標権…「苗が流出しても勝手に名乗れない」

https://www.yomiuri.co.jp/member/scrap/20250122-OYTNT50009

2025年12月17日付 読売新聞オンライン 採れたて「あまおう」空輸でいち早く首都圏へ…福岡県・JA・JALが連携、鮮度とブランド力を向上へhttps://www.yomiuri.co.jp/member/scrap/20251217-GYS1T00098