JMS特集(2)環境に配慮したクルマ EVは安全なのか

ジャパンモビリティショー2025では、海外メーカーのクルマも展示されました。韓国の自動車メーカー、Kia PBV Japanは、双日株式会社が日本における正規販売総代理店となり、第一弾モデル「PV5」を2026年春に発売すると発表しました。日本でもKia社の電気自動車(EV)を見かけることが増えるでしょう。

写真撮影に臨むKia社の経営陣(10月29日筆者撮影)

一方、BYDは1995年に中国・深圳でバッテリーメーカーとして創業し、現在は、70の国と地域に進出しています。日本向けの軽自動車EVを開発しました。軽自動車は税負担が少なくなるため、需要があると感じます。BYD日本法人の東福寺厚樹社長は「軽自動車を購入する消費者の予算感覚を目指す」と意気込みます。国のエコカー補助金の対象となる見込みで、「リーズナブルな価格で購入できる予定だ」と話していました。

また、EVバスも開発しています。筆者の暮らす大阪では、BYD社のEVバスが走行しているのを見かけます。

BYD社の電気(EV)バス K8 2.0

航続距離は約240km

EVを開発している会社として、気候変動を深刻な問題と捉え、地球の温度を1度下げるビジョンを掲げています。モビリティを、人にとっても地球環境にとっても良いものにしていかなくてはならないと語ります。

このような話を聞くと、「EVは本当に環境にやさしいのか」という疑問が頭をもたげます。電気を作るために化石燃料を多く使用しているからです。実に日本の発電電力量のうち、化石燃料が占める割合は約68.6%に達しています。EVが本来の効用を発揮するには、再生可能エネルギーのさらなる拡大が求められるでしょう。

またEVに使用されているバッテリーについて、発火や発熱の危険性が広く報じられています。京都駅前のホテルでは、客室でモバイルバッテリーから出火、宿泊中の約2000人が避難する騒ぎがありました。また、筆者が飛行機に搭乗した際、モバイルバッテリーは頭上の棚に収納せず、状態が確認できる場所で充電するよう案内がありました。バッテリーへの警戒は高まる一方です。

だからといって、EV火災の危険性は高いのでしょうか。2024年に集計した国家運輸安全委員会(NTSB)の調査によると、車両10万台あたりの火災発生件数は、ハイブリッド車3,475台、ガソリン車1,530台、EVはわずか25台でした。

むしろ、EV車は安全性が高いことが分かります。各社、しのぎを削るEV市場、今後の展開にも注目です。

 

もう一つモビリティショーで注目したのは、自動車産業を支えてきた部品メーカーの取り組みです。たとえば、FUTABA(愛知県豊田市)は環境負荷を低減する部品開発に取り組んでいました。材料の使用量を削減しつつ軽量化を実現し、従来よりも「硬くて薄い」材料へ加工する技術を確立しました。これにより、これまで6点など複数で構成されていた部品を1点に集約することが可能となり、部品間の接合部が減りました。衝突時に部品が外れるリスクを最小限に抑えられ、安全性の向上が期待されています。

また、生産工程では、不具合がどこで起こりやすいのか解析し、不良品の発生を抑制し、品質の安定化も図っているそうです。

強度が向上し小型化した部品はフロントピラーにも採用されています。視界が広がり、歩行者やバイクなど周囲の状況を把握しやすくなります。筆者自身もレンタカーを運転した際、普段乗っている車と比べて「視界が狭い」と感じた経験があり、「ピラーがより細ければ、安全性はさらに高まるのに」と実感したことがあります。すべてのクルマに採用され、交通事故が減ることを願います。

ピラーとは 自動車の屋根を支える柱の部分を指す

従来のフロントピラー

新しいフロントピラー

視界が広まり、歩行者が視認できるように

参考記事

朝日新聞デジタル、2025年10月6日、「モバイルバッテリーから出火か 京都のホテル、宿泊客ら一時避難」

日本経済新聞電子版、2025年10月29日、「EV普及を「軽」に託す BYDとスズキが新型車、価格競争へ号砲」