梨泰院雑踏事故から3年 事故後の教訓と対策とは

2022年10月29日にソウル特別市梨泰院(イテウォン)で起こった雑踏事故から3年が経ちました。ハロウィーンの時期にあたり大勢の人が訪れていた中で発生し、159人が亡くなる大惨事となりました。

 

事故はソウルの梨泰院駅1番出口付近の幅3.2メートル、長さ40メートルの狭い坂道で発生しました。当時1平方メートルあたり10人以上というすし詰め状態だったことが「群衆雪崩」を引き起こしました。人と人が密集している状況で起こる群衆雪崩は、周りから身体へかかった強い圧力によって気絶した人や倒れこんだ人を中心に発生します。これにより空いたスペースに円状に次々と人がなだれ込んで折り重なるように倒れ、胸部などが圧迫されてしまいます。実際に事故のあった坂道を歩くと雑踏から身を避ける場所はなく、写真で見るよりも道が狭いように感じました。

梨泰院の雑踏事故が起こった坂道(8月25日、筆者撮影)

 

この事故では、雑踏事故を防ぐための安全対策が不十分であったことが問題視されています。事故の引き金となったハロウィーンのイベントには主催者がおらず、警備にあたっていた警察の責任が問われることになりました。

事故後は歩道に混雑状況をリアルタイムで見ることができる電光掲示板が設置されました。掲示板は事故のあった場所だけでなく付近の道路にも設置されています。

道の混雑状況を確認できる電光掲示板(8月25日、筆者撮影)

 

日本でも2001年7月21日に兵庫県明石市の花火大会で雑踏事故が発生しました。JR山陽線の朝霧駅南側の歩道橋で駅から会場へ向かう人と会場から駅へ向かう人で群衆雪崩が起き、死者11人、重軽傷者247人の事故となりました。この事故も警備体制の不備が問題となっており、主催者である明石市と警備をしていた警察の責任が問われました。

この事故がきっかけとなり、日本では05年に警備業法と国家公安委員会規則が改正されることとなりました。警備業法に定められた国家資格である警備業務検定では常駐警備、交通誘導警備に加えて新たに雑踏警備の項目が加えられました。花火大会など特定の場所に不特定多数の人が一時的に集まる際の交通規制などを雑踏警備としています。

 

大勢が詰めかけるイベントでは会場の安全を最優先して整備する必要があると考えます。私たち個人でできる対策もあります。大勢の人が集まるイベントでは人の流れを見極め、人混みを避けることが極めて大切です。

 

参考文献:

2022年11月1日 読売新聞オンライン 密集空間の隙間に向かい、次々と倒れる「群衆雪崩」…有効な対策は「一方通行」

https://www.yomiuri.co.jp/national/20221031-OYT1T50242/

2025年10月26日 朝日新聞デジタル 韓国・梨泰院の雑踏事故から3年 外国人犠牲者の遺族らが現場で追悼

https://digital.asahi.com/articles/ASTBT4T7CTBTUHBI00YM.html